朝目覚めてトイレに行くと右足踵に違和感を覚えた。左腰と足に痛みがあったはずだが、痛みが違うが覚えのある痛みだった。通風だ。過去の経験では痛みは親指か小指の外側だったが、今度は踵の内側だった。参ったなー、全身ボロボロだ。田舎に来る直前に掛付け医に、高尿酸値(9.5)と腎機能の低下は見逃せない、田舎で必ず医者に診てもらうようにときつく言われていた。
それから10日間忙しさに紛れ医者に行きそびれていたが、これで踏ん切りがついた。2年前のガン疑惑に懲りて今度は最初から市立の総合病院に行くことにした。初診の予約は出来ないというので高速をぶっ飛ばして受付期限の11時過ぎに窓口に行って手続きした。カードを作ってもらうと、次は内科の受付に行けといわれ、そこで問診のアンケートに記入し待った。
総合受付も内科受付も待合のベンチは患者で一杯だった。殆ど老人患者だった。待ち時間が長くなると予想し持参した読みかけの本を読み切った頃に名前を呼ばれた。看護婦に詳しい追加質問を受け、その挙句に通風は整形外科だと言われた。もう昼過ぎで時間切れだと。それはないよ。だが、いずれにしろ先ずは検査といわれ、身長体重測定と尿検査をした。
その後、指示に従って血液採取・胸のX線撮影・心電図撮影をやってもらった。血液採取は4つのビンに取り、通常の心電図に加え四肢の血圧測定による動脈硬化測定、心臓の大きさ測定、頚動脈硬化測定(エコー)をやった。私には初めての検査で、どうも高齢者の血管の劣化の進行度合いを調べるのが目的だったようだ。測定時間がかかるので検査技師とその間に雑談が弾んだ。
彼女によるとX線とMRIはオンラインで診察室と繋がっているが、予算の制約で他の機器はまだでこれから報告を書いて医者に出すからチョット待ってねとおどけて言った。そういえば院内の壁に取り付けられた無線中継器みたいな小さな箱があった。総合病院だけど、医者不足で産科と小児科がクローズした、道理で患者は年寄りばかりだった。
担当医は院長で私と同年輩くらいだと思うが、口の利き方が威張っていた。私が少し医療知識みたいなことを言うと、本当に分かっているのかと途中で遮ってああだこうだと断言調で説明した。結論を言うと、動脈・心臓・腎機能等には若干の劣化が見られ、尿酸値は8.2、中性脂肪は140とやや多めだが善玉が57ある、生活習慣(食事)を変えるだけでいいという。
それは一言で言うと「減塩」だという。私はかなり気をつけてきた積りなので、又普段気をつけていることを言うと、先生は又も遮って専門家の食事指導を受けろと一喝された。もう少し優しく言えないものかと思ったが、「ハイ有り難うございました」と素直に答えた。実際、今迄受けてきた健康診断よりよほど詳しくデータを取ってくれ大きな問題が無いことが確認されたので感謝した。それに多分院長判断で整形外科にまたがって対応してくれた。偉そうなのは許す。
受け付けに行って支払い手続きをお願いした後、別室に案内されて食事指導を受けた。部屋には若い栄養士(多分)が待っており、私から日々の食生活を聞いていかに隠れ塩分摂取が多いか説明してくれた。塩分は6g/日に減らせ、そのためには味噌汁の味噌や煮物の塩は1食当たり1g、麺類は週1回、梅干・漬物は基本禁止、好きなサバは生を焼き後から醤油といった具合だった。
気が付くと昼食もとらずに午後3時前になっていた。3時から来客予定だった。3件も留守電が入っており明日に延期を依頼する伝言でホッとした。指導に従って味噌汁を作り遅めの昼食をとった。まるで味が無い。夜は冷蔵庫に残っている材料で煮物を作った。味が酷く薄く、よく言えば材料本来の味がした。栄養士によれば2ヶ月くらいで慣れて美味しく感じるようになるという。
蛇足だが、いろんな種類の検査をしてくれたので医療費が1万円以上になり、財布にある現金では足りなかった。カードは受け付けないという。それでは後から銀行振り込みにさせてくれというと、誓約書にサインさせられ拇印を押した。こんな恥ずかしい事になっても平気で冗談を飛ばす私もチョット恥ずかしいかなと、周りを見回したが誰も見てない。朝一杯だった患者が殆どいなくなっていた。今心配なのは、明日の朝通風が悪化して牙をむくのが怖い。■