かぶれの世界(新)

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「ドル崩壊」報道の怪-実はユーロ危機!?

2008-10-29 21:14:18 | 社会・経済

先日から一連の記事において、「ドル崩壊報道の怪」で円以外の通貨に対してドル高になっており単純なドル危機報道には矛盾がある、「特異点な国」で円の独歩高は日本の過剰貯蓄という特殊事情によるところが大、「世界金融危機のアナロジー」でサブプライム問題は米国発だが結果として世界金融システムの弱点を余すところ無く抉り出して表面化させており、必ずしも米国の問題と捉えるべきではないと示唆した。

今回はユーロ安の危険な背景についてタイムリーな記事を見つけたので紹介する。

各国政府が個々に具体的な金融不安対策を打ち、それに対してマーケットが即座に反応する状況を見てきて、新たな問題が見えてきた。サブプライム問題が欧州に波及し金融不安が起こった時とは明らかに異なる。それは、世界連鎖信用不安の影響で新興国市場の株価と通貨が急落し、新興国に積極的に融資してきた欧州系銀行の損失拡大が表面化したという新たな危機だ。

ロイター(1029)によると海外から新興国への融資残高の3/4は欧州の銀行からで、新興国へのエクスポージャーの対GDP比はユーロ圏で21%、英国が24%であり、米国4%、日本5%に比べ異常に高い。新興国という信頼度の低い国へのエクスポージャーがGDP1/4-1/5というのは異常だ。サブプライム以上の深刻な問題に発展する可能性があると報じている。

ユーロ暴落の背景にはこの新興国に対する過大な投資があったということだ。これは、住宅価格が永遠に上昇を続けることを前提にしたサブプライム問題とよく似た構造のように私には思える。新興国の経済成長もいつか止まるとしても、こんなに早くその時が来るとは思わなかったのだろう。特に貸付の多い東欧諸国の経済破綻が続くと、第2の世界金融危機の震源地になるとロイターは報じている。

ドル崩壊どころか、実態はユーロ危機が迫っている。その不安がユーロの暴落を招いている。英首相や仏大統領が金融危機に対し素早く動いたのは、この背景を良く理解していたからかもしれない。ユーロの基軸通貨を論じるどころか、更なるユーロ安が続き世界経済の足を引っ張る可能性が現実味を帯びてきた、というのが現実の姿のようだ。第2の金融危機に発展する事態は何としても食い止めなければならない。■ 

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特異点な国

2008-10-27 21:55:10 | 社会・経済

26年ぶりの株暴落

本日の日経平均は前週金曜日比486円安の716290銭でひけた。バブル崩壊後の最安値どころか、1982107日以来26年ぶりの安値になったと報じられている。銀行の資本増強のニュースが逆効果になり不安を与え、円高・株安の不安連鎖に火を注いだ格好となった。

サブプライムの影響を最も受けてないといわれた日本経済なのに、何故、世界で最も株価が下落し、かつ通貨が最も高くなったのだろうか。日米以外の総ての国は株価暴落と平行して通貨下落が起こっている。米国はさておき、何故日本の株価大暴落と円急騰が同時進行しているのか。

数学で関数内変数がとりえない値を特異点[1]と呼ぶが、日本だけは経済原則があてはまらない「特異」な国なのだろうか。何故、株安・円高が同時進行するのか同じ疑問を持つ人は多いらしく、お昼のお茶の間向け番組で解説があったのを聞いたが、納得できる内容ではなかった。

株安・円高の原因

株安は世界市場動向と合致しており、心理的な要因はあるものの、輸出に頼る日本の株価暴落は不思議とは思わない。だが円の独歩高は何故だろうか。世界で最も株安が起こる国の通貨が最も高くなるのは理屈に合わない。そこで例によって誤解を恐れず私の大胆仮説を展開する。

根本原因は日本の度を越した巨大な貯蓄に求められると、私は推測する。日本人の個人資産は世界同時株安で目減りしたが年初1500兆円以上で、大部分は投資されること無く低金利の預金や保険金で眠っていた。だが、個人は直接投資しなくとも金融機関は預けられた預金を運用した。

現実には日本国内に魅力的な投資物件が無い為、多くは海外のヘッジファンド等に貸し出され高いリターンが期待される通貨に変えて投資された。所謂円キャリーだった。世界不況になり、今まで貸し出された巨額の資金が一斉に返却され膨大な円買いが起こり、円の暴騰が起こったわけだ。

量は質を変える

巨額な個人資産が預けられた金融機関が国内に投資先を見出せず、運用益を売るために海外に向った。しかし、金融機関も用心深くリスクのある投資よりも「安全な貸し出し」を選択した。日本人は投機に走らず安全な預金を選び、金融機関も投資より安全な貸し出しをしたはずだった。

しかし、巨額であったために変調が起こった時の資金の逆流が、土石流みたいな破壊力を持ったというように私は感じる。後知恵的な言い方になるが、類例のない巨額の金融資産にはそれなりの使い方、もっと言うなら秩序ある運用法を考える必要があった。量は質を変えたと私は思う。

私の経験では、これは日本的組織が陥り易い罠のように感じる。

特別に世界を揺るがすような挑戦的・挑発的なことはせず、より確かで安全な手法をとり着実に成功の道を辿る。しかし、全員が同じ方向を向き、それが卓越している為か、はたまた知恵が無い為か、いつの間にか突出して巨大になり存在自体が変質、環境変化に脆弱な体質になるという罠だ。民族的DNAとでも言えばいいのだろうか。しかし死ぬわけじゃない、必ず朝が来る。■


[1] 例えば関数F(x)=1/xにおいてx=0は存在しない特異点といわれる。

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トロイの木馬

2008-10-24 22:26:52 | デジタル・インターネット

今朝パソコンを使い始め暫らくして、突然、「パチッ!」という音がパソコン本体の中から聞こえた。「あっ」と思った。明らかに不吉な音だった。直ぐにアプリケーションがフリーズし、強制終了させようとしているうちに、例の恐怖の「暗黒の画面」に切り替わった。

強制的に電源を切り、再立ち上げをトライしたが、ブートストラップの段階でファイルが見つからないというメッセージが出た。何度かトライしたが、以前の不安定さとは異なり、同じ不具合現象が繰り返して現れた。物理的に音が聞こえたので、電源系かリレーなどの不具合が起こったと思った。

とうとうハードディスクが壊れたと覚悟し、息子に状況を説明し、代わりのディスクを買ってくれと頼んだ。息子は先ずディスクをチェックすると答えたが、不具合の現象が安定しており、もう駄目だろうと内心思った。パソコンは私のデータセンターであり、ライフラインになっており、ショックだった。

午後、外出から戻ってきて聞くと、意外にもハードディスクを読み取れたという。更に1時間後、「トロイの木馬」が見つかったので削除したが、他に不良は見つからなかったという。有名なウィルスだが、まさか「トロイの木馬」がディスク不良を引き起こすとは思いもしなかった。

しかし、ウィルスを削除したディスクを再度組み立て、ウィンドウを立ち上げると正常に動作した。アプリケーションも問題なく動いた。なんだか少し早くなった気がする。折からの円暴騰・株暴落のニュースが気になったが、念のため先ず最新状態のバックアップをとってからとした。問題なし。

以前に息子に勧められて、セキュリティ・ソフトをavastに切り替えたと報告したが、彼によると「トロイの木馬」はすり抜けるはずがないという。私の運用に問題があったのかもしれない。時々出て来る警告メッセージの処置にミスがあったのかもしれない。

今回は3日前にバックアップを取ったばかりだったので、ディスクを新品に切替て再インストールし、3日前の状態からバックアップを使って復旧するつもりだったが、何とか無事に昨夜の状態に戻った。これで、復旧の為週末を潰す必要もなくなった。もう息子に頭が上がらない、感謝、感謝。■

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世界金融危機のアナロジー

2008-10-23 16:01:00 | 国際・政治

グローバル金融不安はG7・G20各国の対応で、一旦落ち着きを見せた。しかし、息つく暇も無く実体経済が予想以上に傷んでいることが明らかになり、動揺は収束していない。今度は、欧州がユーロ暴落、ハンガリー・アイスランド等の通貨危機が表面化し、底を打ったという感じを受けない。

そこで頭の体操を兼ねて、世界の金融システムを揺るがした仕組みと金融商品を、若干こじつけ気味ではあるが、私が長く働いたハイテック業界で起こったことで喩えて、視点を変えて頭を冷やして見直し理解を深めたい。最初に、今回の問題に対する私の理解を大雑把に説明する。

サブプライム峠の先に真の問題があった

今回の金融危機は、サブプライム・ローンの焦げ付きから起こったが、「今にして思えば、サブプライム問題は広く蔓延している金融システムの欠陥をえぐり出したに過ぎなかった」(Rサミュエルソン)であり、今世界が直面しているのは「もっと根源的なグローバル金融の問題」である。

その中でも金融技術を駆使したデリバティブ(金融派生商品)と、それを流通させる仕組が世界を震撼させた主役である。これに関して最も有名なコメントは、世界最大にして著名な投資家ウォーレン・バフェット氏が、「デリバティブは金融版の大量破壊兵器であり、潜在的に致命的な脅威である」と、既に2003年に鳴らした警告であろう。

金融派生商品とその流通が危機を招いた

代表的な金融派生商品は、サブプライムを小口化して他の証券と組み込合わせた債務担保証券(CDO)といわれるもので、世界中の投資家が買える様に市場に流通された。CDOは格付け機関(ムーディーズ等)が高く格付けし信頼感を与えた。更に、万が一債務不履行等の問題が生じた時のために、クレジット・デフォールト・スワップ(CDS)という保険(AIG)でリスクがヘッジされた。

つまり、証券の中身が分からなくても誰でも安心して買える様に、高い格付けでお墨付けを与え、万が一の時の保険をかけリスクの無い投資のように見える仕掛けで、世界中の投資家を引き付けた。しかし、騙したとは言わないが、リスクが顕在化した時、重大な落とし穴が隠れていた訳だ。

アナロジー

この仕掛けは、ハイテック商品がデジタル化され商品開発・生産が「モジュール化」した時のことを思い起こさせる。パソコンの場合について言うと、IBMがPCATと呼ばれたパソコン標準を公開後、世界のパソコン業界が一変した。当時圧倒的な力を持ったIBMの仕様公開により、パソコンを構成する部品が実質上標準化されて流通し、サブプライムの証券化と良く似たプロセスが起こった。

即ち、極めて高度な技術が詰まったOSやCPUを、マイクロソフトやインテルがパソコンを構成する標準部品として供給し、短期間に世界中のパソコンに組み込まれることになった。パソコン装置メーカーは「ブラックボックス」といって、当初は中身が分からないまま利用することを躊躇したが、膨大な自主開発コストや競争力を考えると標準部品を利用する他に選択の余地が無かった。

ブラックボックス・モジュールの絶大な効果

技術力が無く中身を知らなくともパソコンが作れると分かると、次の段階として労働コストの安価な台湾や中国、東欧などに生産が移行されグローバル水平分業が起こった。周辺機器など他の部品も驚異的な速度で技術進歩が起こった。かつてのスーパーコンピューターの性能を持つパソコンが安価になり世界中に普及、今では秋葉原で部品を買い誰でも自作パソコンが作れる。

ハイテック商品に限らないが、標準ユニットを調達し組み立てる方式を、モジュール化もしくはモジュール型生産という。日本の製造業はモジュール生産より自動車のような擦り合わせ型生産が得意だと以前報告したことがある。やがて日本メーカーは世界市場から撤退を強いられて行った。

生産方式の違いはサプライチェーンやビジネスモデルにも関る。金融システムでも「証券化を通じたモジュール化が起こった」と考えることも出来る。モジュール化により中身はよく分からないが、リスクが薄められ普遍化されて世界に安価に提供する仕組は、正に米国が得意とする技術によるビジネスモデルの転換だった。しかし、不幸なことにその金融商品には不具合が混じっていた。

ハイテック商品と金融商品の違い

しかし、アナロジーはここまでだ。CPU等のブラックボックスに問題が起こった時、最終販売者であるパソコンメーカーは標準部品の提供者と連携して責任を持って販売した商品を回収修理した。その業界でビジネスをしていくための常識であり、それが出来なければ市場から退場させられた。

だが、金融業のモジュール化は高度な金融技術でリスクを分散させたが、万が一のとき誰もが責任を取れないシステムを作り上げてしまった。これが決定的な分かれ目だった。それが、手持ち資金の30倍もの投資(レバレッジが30倍)を可能にし、サブプライムという地域の問題を世界の危機にまで大きくさせた一因となった。

リスク転嫁の仕掛け

何故こんな欠陥システムを許したか。牧野洋氏はこの無責任システムを、「債権者はCDSを買うことによりリスクをAIGなどの第三者に転嫁していたところに問題の根っこがあった」とし、「他人の資産に勝手に保険をかけた綻び」(日経BP10/20)との指摘はポイントをついている。

氏は続けてフォーチュン誌の記事を引用して、CDSとは乱暴な運転をする友人に無断で勝手に車両保険をかけ、本当に事故が起こると保険金を受け取る。保険会社もリスクを感じて、保険契約を第三者に転売し、更に他の証券と併せ転売されるようなものだと分かり易く説明している。

ハイテックが危機を加速

いくらなんでも、こんな無責任なことはハイテック業界では起こらなかった。だが、短期間に問題を危機レベルに高め世界の投資家をパニックに陥れたのは、ハイテックが貢献している。日本語版ニューズウィーク誌(1029)によるとインターネット通信技術が影の銀行システム(規制対象外にある貸し出しシステム)を作り、金融危機を生む一因となったと指摘している。

それは目に見える建物内にある市場ではない。多くの規制外の取引は「IM」を介して行われ、数人のトレーダーとメッセージ交換するだけで、例えば1億ドルCDSの売買が成立したという。現在ネットは金融情報で溢れているが、この肝心なトレーダー取引の実態は闇の中のままだという。

アナロジーが意味するあるべき姿

最近の危機について、ロケット学者がタネを蒔いた金融技術は経済が均衡状態にあるときに機能するモデルをベースに作られたもので、危機に陥り新しい均衡状態を求めて市場が流動的になった時の振る舞いの考察が欠如しているという指摘は、私のような素人にも納得の行く説明である。

現状の混乱を見ると、そもそも経済学とは均衡状態での学問であり、一旦市場が危機に陥ると寧ろ心理学の出番だというのも理解できなくはない。だが、上記のアナロジーからいえることは、モジュール化によるブラックボックス商品のもたらした利益は維持可能な範囲に抑え、リスク転嫁とレバリッジは明確な基準に基づいた規制を優先すべきだと思う。■

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「ドル崩壊」報道の疑問

2008-10-17 20:03:34 | 社会・経済

このところ「ドル危機」、「ドル信任崩壊」、「ドル壊滅」等と題する記事が、多くの新聞・雑誌のトップ記事として見かける。サブプライムから始まった金融不安とその対応で、米国の財政赤字が更に悪化するのは避けられない見通しになったことが、背景にある。

だが、例によって、一見当然とも思えるドル危機を説く記事は、その根拠に違和感がある。確かに対円ではドル安が進行しているが、世界のその他の通貨と比較するとドル高が進行しているのだ。因みに日経ネットを検索して、今日(10/17)と3ヶ月前の為替レートを比較してみた。

通貨    08/07/18  08/10/171440) 変化率
日本円     100        100 
USD      107.5       102.7    -4.5
EURO
      170.2       138.4   -18.7
英ポンド    216.7       180.3    -16.8
豪ドル     105.6        72.1    -31.8
韓国ウォン   7.89       10.73    -26.5
台湾ドル     3.12       3.51    -11.1

つまり、円に対して米ドルは安くなっているが、他の通貨に対しては軒並みドル高が進行しているのだ。米国発の金融不安から世界大不況の瀬戸際にあり、米国の財政赤字は一層深刻なものになるのは間違いないと思うが、一方でドル高が進行しているのだ。

ところが、件の記事は円に対してドル安が進んでいると指摘しドル危機迫る、というのは根拠不十分であり、読者をミスリードしないだろうか。何故、危機が迫っているのに他の全主要通貨に対してドル高なのか、これを無視してドル危機を議論出来ないと私は思う。

今朝話した某証券会社の某氏によると、豪ドル下落はヘッジファンドが金策に走り資金引き上げ、円に巻き戻しているからだという。ヘッジファンドが世界に投資した資金を引き上げたら、ドル高が進むという説は私には分り易い。それは、又、ヘッジファンドから投資家・機関に戻るだろうが。

不都合な事実を無視して仮説を主張するのは、Pジョンソン氏によれば昔からの常套手段であり、話半分に聞けということかもしれない(インテレクチュアルズ 1992 共同通信社)。だが、ドル危機という結論があっていればいいじゃないか、というものでもないと思う。

先日投稿した「無知の押し売り」で、「原油高」報道は根拠の無い不安を煽るようなものだと指摘した。案の定、昨日はついに原油価格(NYMEX)は69ドルまで急落した。火事場で根拠があやふやな流説を流すようなことにならないよう心掛けたいものだ。■

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