今年最後の日に振り返って、年初に何を予測したのか殆ど記憶がない。色なことがあり過ぎて忘れたというのが今の心境だ。息子が結婚し田舎でお披露目していくらも経たないうちに、母が脳梗塞で倒れ東京と田舎を何度か行き来し、並行してリーマンショック後の大暴落で個人資産がローラーコ-スターのように急落・上昇と、刺激的で目の回る1年だった。
私は、史上初めて各国政府が経済対策を一斉に取り組むので、世界同時不況は予想以上に早く回復すると予測した。米国の立ち直りをきっかけに世界経済が回復に向かい、次いで新興国が両輪の一方となって回復を加速させるだろうと。予測の根拠は論理的というより悲観論者の揚げ足取りに負けるな、という気持ちがあった。
総括するとこの予測は概ね当たった。サブプライム焦げ付きに端を発する世界連鎖信用危機の震源地となった米銀が、早くも3月に予想外の収益性回復が報じられると、安全な隠れ家に避難していたグローバル・マネーが早々とリスク性向を高め、新興国に流入して景気を刺激し世界経済回復を牽引した。新興国経済の力強さは予想以上だった。
NYタイムズによれば2007年12月に経済の下降が始まった。今年2月に底を打ったとすれば僅か15ヶ月で景気は回復に向かい始めたことになる。その原因は、何といっても世界各国政府が総力を上げて景気対策を打ち、保護貿易に走らなかったことである。加えてマーケットの変化を常態と考えて、先進企業が自らをかつてない速さで変化させたことを指摘したい。(この世界規模の対応の早さが崖から落ちるような恐怖感に変えたとも言える。)
危機に瀕した国や企業の取り組みによって明暗が分かれた。徹底した構造改革で短期間に収益性を回復させた米企業は驚異的だ。今年春頃に政府の支援を受けて倒産したGMが、早くも救済金の返済計画中と報じられた時は耳を疑った。どう考えても我国ではありえない早さだ。共通するのは、企業の収益性改善が先行し、雇用の改善にはかつて無く長い時間がかかるだろう。
現時点での懸念事項は、世界的な景気対策のお陰で経済回復が進む一方、金余りでリスクマネーが行き場を求めて世界を咆哮していることだ。先進国は貸し渋りで悩む一方、新興国は過剰なマネー流入を抑制し始めた。希少資源など既にミニバブルの様相を呈していると報じられている。だが、喉元過ぎれば何とやらで、同時不況の原因となった金融システムの規制が遅れている。
一方我が国はといえば、私は当時の麻生政権の政策では日本が世界最初に不景気から抜け出すことなどありえない、自律回復は期待できず世界経済回復の後尾に付けるのが精一杯と予測した。不幸なことに一時は株価が日本の一人負け状態になり、予測はドンピシャリ当たったといえる。付け加えると日本人全体のセンチメントとポピュリズム化が停滞を後押しした。
とは言っても、12月の日銀短観の業況判断では比較的順調な回復を示した。在庫整理、輸出回復と内需刺激策が貢献したと見る専門家が多い。だが、足下では内需拡大は先行き不透明、世界経済回復をどれだけ取り込めるかに頼らざるを得ない状況にある。
この不透明感は現下の政治環境が影響している。民主党政権誕生までは世界市場と同期して日本の株式市場は回復した。だが政権交代後は司令塔不在でマクロ経済政策が定まらず、世界の投資家は日本経済の先行きを評価せず、私が予測した日経平均13000円を大きく下回る期待外れの結果となった。
お楽しみのスポーツでは、日本サッカーのスピードサッカーは少なくともアジアでは通用し予想通りW杯予選通過した。一方、日本人MLBプレイヤーの不調は二人の傑出した活躍を除き予想通りだった。イチローが何らかの健康問題に直面するのは予想通りだったが、それでも結果を出したのは「凄い」の一言だ。松井が満身創痍で最後に大活躍したのも嬉しい驚きだった。
それでは最後に個別予測の自己評価を:
1. ○オバマ新政権の経済対策で秋以降効果が出て回復へ、年間ではマイナス成長(-1%)。
2. △欧州経済回復遅れるが、Euroの基軸通貨としての存在感増す。
◎新興国内需が成長し米国とともに世界経済を牽引する。
3. ○中国は刺激策で内需増加、最低限の成長率8%を切るが、4Qは10%台回復。
4. ○麻生政権は総選挙で負け下野、民主党主体の連合政権が成立する。
5. ○日本経済は世界経済減速で外需頼みの構造的にマイナス成長するが、米国と新興国の成長に助けられ秋に底を打ち、回復に向かう。
6. ×世界経済回復を先取りして、年末には日経平均13000円台に回復。
7. ◎日本サッカー、攻撃重視のスピード・サッカー・スタイルが機能し、W杯予選突破する。
8. △日本人メジャー苦戦、イチローは怪我で200本安打記録が途切れる。松坂は研究され不振、その他選手力不足で期待通りに働けず。
最後に私の天邪鬼的視点: この1年マーケットを追いかけてきて米国よりも欧州のもたつきと相対的な影響力の低下を私は感じた。EUが大きくなり過ぎて地域間格差が拡大し、東欧やギリシャ・スペイン等常にどこかに危機を内包し、何時までも不良債権を処理できない、素早く意思決定できる一体感が感じられない。先のCOP15の失敗もその現われのように感じた。新興国の急成長で壮大なEUプランは、相対化されたように感じる。多分、来年にも検証されることになるだろう。
それでは読者の皆様、良いお年をお迎え下さい。■