大統領就任後100日が経過し、米国のメディアは一斉に世論調査を行った。結果はどこも同じで、オバマ氏が大統領に相応しい人格・資質を備え信頼に足ると支持する回答が圧倒的に多かった。レーガン大統領以来の高支持率だという。
一方、個々の政策については同じような高い評価を得たわけではなかった。26日のワシントンポスト紙の世論調査結果によると、財政赤字対応や自動車産業救済、テロリスト容疑者の尋問に関する秘密文書公表など個々の政策について、世論は必ずしも大統領支持ではない、賛否が真二つに割れている。
必ずしも個々の政策が支持を得た結果の高い支持率でないことは、どの世論調査でも明らかになった。とすれば、何故米国民はそんなに「温かい目」で大統領を見ているのだろうか。以前に指摘した「クイック・ヒット」(小さな成功を素早くあげて信頼と時間を繋ぎとめる)すらまだ出ていない。
その第一の理由は、米国民の多くが深刻な不況下なのに経済に対して楽観的であることだろう。NHKが流した公共放送(NPR)の番組で、「1年後の経済は良くなる、オバマはもう少し時間が必要」と笑顔でインタビューに答える失業者達が、大統領の高い支持率に貢献している。このところ経済指標の全てが悪化する最悪時期を脱し、株価が上昇し始めたとしてもだ。
二番目の理由は、上記ポスト紙の世論調査で「大統領は選挙公約を守っている」、「ワシントンに変化をもたらした」、「一生懸命やっている」といった、私風に言うと、具体的成果は見えないがいまだに「オバマ氏のスタイル」を好ましく思っている人達が国民の7、8割もいるということのようだ。端的に言うと、米国民はオバマ大統領がまだ好きなようだ。
オバマ大統領に対する大きな期待は3ヶ月経っても衰えていない。結果として彼の政策が具体的な成果として現れるまでの時間、即ち、依然として上昇する失業率や金融不安などを解決する為の猶予時間、を引き延ばしてくれている。翻って、支持率の低い麻生首相には総選挙までの短時間で成果を見せなければならず、超短期のバラマキ政策をとらざるを得ない辛さを感じる。
最後に蛇足ながら、世論調査するテレビ局が逆に国民からどう思われているかについて。世論調査の専門機関(Pew Research Center)も、オバマ大統領の支持率については全く同じ傾向を示していた。同時にテレビ局によって大統領の見方に差があると感じるか視聴者に聞いた調査結果を報じていた。
それによると3大ネットワークに比べFOXがダントツでオバマ大統領に辛いという。日本の有力なメディアの調査には、時にテーマにより恣意的に誘導された結果と感じる場合がある。報道に対して読者や視聴者の声を伝える信頼できる第三者の調査会社が日本にも是非ほしいものだ。■