決選投票で海江田経済産業相に逆転し野田佳彦氏が民主党代表になり、次の首相に指名されることが決まった。下馬評は寧ろ前原人気が高かったが、徐々に野田氏の政策を支持する声が高まっていたという。1回目の投票で予想を上回る102票を獲得した野田氏が、決選投票では3-5位前原・鹿野・馬淵氏の支持を得て代表に選出された。
昨日からの報道では、海江田氏の支持グループから強引な多数派工作を受けて、鹿野陣営と浮動票が反発し野田支持に回ったという。マスコミは政策本位とか言いながら、このような政局本位の数合わせの報道を強調し勝ちで、今回もその傾向が変わらないと感じた。
だが、野田氏の勝利の最大の意味は民主党に残された「見識或いは良識」が働いたように私には感じる。民主党には候補者の演説内容を聞いて投票を決定する層、いわゆる「派閥」の縛りや「グループ」の方針より自分の考えを優先して判断する浮動票がいる。
私はこの浮動票が民主党の良識であり財産である(必ずしも毎回とはいかないが)、と考える。彼等はネジレ国会の環境下でマニフェスト原理主義のように妥協を拒む鳩山・小沢グループでは国会運営は成り立たない、強いては我国の為にはならない、と判断したように感じる。浮動票が民主党を正気に戻し何とか健全さを保たせたと思う。
全くの不能振りを曝け出し退陣し次回総選挙に不出馬生命をした鳩山前首相と、強制起訴され裁判を控え党員資格停止されている小沢代表の指示を受けて、発言を変えるような海江田氏では元々首相の器ではないし国民の支持は得られないと判断した。(尤も政策を権力闘争の道具扱いにする小沢氏が、一旦権力奪取すると豹変して野党と手を結ぶ可能性は大きいのだが。)
野田新政権に期待するところ大だが、役割を全うすることなく短命政権に終る可能性は十分ある。現状の自公の姿勢とマニフェスト原理主義の党内反主流派の両方を納得させ、安定した与野党協力体制を作ることは極めて困難で、解のない方程式を解く様な難しさがある。そこで政権運営が機能しなくなった時、小沢氏の出番待望論が出て来る可能性がある。
結果として国会が停滞すると、マスコミは性懲りもなく政局報道を繰り返し解を持たない新政権を集中的に叩き、次第に国民の支持を失い野党は国会審議より解散を求める。ネジレ国会も小鳩派勢力も維持されており何も変わらない現状では、この悲観的な予測が繰り返される可能性はある。野田政権が機能するかどうかは、マスコミや国民の見識が試されることでもあるのだ。■