的外れの非難
来年度の予算が衆院の優越規定で成立したと報じられた。しかし、この後のつなぎ法案や予算関連法案については先行き不透明、震災復旧の補正予算については当面は予備費で凌ぐにしても早急に具体化すべきだが、未だに与野党一致して国難に取り組む姿勢が明確になっていない。
大震災翌日に菅首相が福島原発に視察した為に初動が遅れたのではないのかと、参院予算委員会の終りの質疑で指摘する場面がテレビ画面に流れた。視察がパフォーマンスで東電が対応で初動が遅れたという指摘は、週刊誌やネットなどで流れていたが国会審議で質疑の対象になるほどのことか疑問だ。そんな議論よりどうやって国会議員全員が復興に貢献できるか提案しろといいたい。
メディアに評判の悪い菅首相
菅さんは殆どのメディアに評判が悪いように私には感じる。特に大震災対応では決定はパフォーマンスといわれ、記者会見の頻度を減らすと引きこもりといわれる。谷垣自民党総裁に連立を申し入れると拒否され、党内も含め根回しも何も無い唐突な申し出と報じられた。こちらの田舎では日本経済新聞のみ購読しているが、どの記事でも後半に必ず党内にも異論がある等と菅首相の決定に疑いを残すコメントがつけられている。という事は記者がそう見ているということだろう。
こちらではテレビはNHK・民放とも見えるが、ラジオはNHKとTBS系しか聴けない。NHKはともかく民放テレビも、私が推測するに、地震報道に不必要なパニックを起こさせないよう神経を使っている印象を受けている。だが、ここにきて原発事故が長引くにつれて政府批判する避難者の声に続いて、評論家が政府批判する番組をいくつか見た。困っている人達が現実に居るのだから、ある程度は止むを得ないだろう。
だが、全国放送で菅首相などに対する個人攻撃のような批判をする評論家の発言を聞くと、私はやり過ぎだと思う。それで一体何を提案しているのか、被災者の為に何をしようとしているのか。私にとっての発見は、ラジオ放送ではその種の人達の意見がよく聞かれる。週刊誌やネットでは多様な意見があるのは私にとって織り込み済みだったが、全く受身で入ってくる旧タイプのメディアであるラジオ放送がこの手の内容の放送をするとは思っても無く、いささか新鮮だった。
過去と比べ落第じゃない
菅さん、評判悪いよ。だけどもう一度先日の記事「贈る言葉」を私は申し上げたい。彼らの指摘が全て誤りとは言わないし、問題指摘をしない方が良いとは思わない。だが、大局を見れば今回の大震災では最も重要な決定を外さなかったので、踏み止まっていると私は信じる。これらの決定は当たり前と思われているかもしれないが、かつてはそれほど簡単に即決出来なかった。
最も重要な決定は、自衛隊・米軍投入の迅速な決定である。阪神大震災の時、自衛隊の投入の判断が遅れ、海外からの支援の受け入れに手間取ったのは記憶に新しい。今回震災直後からずっと自衛隊の救援活動は目覚しかった。更に、東北から千葉まで500kmに渡る海岸線が被災し陸路が使えない状態で、米軍史上で最大の支援を受けたからこそ現在までの被害で食い止められたというべきで、いくら感謝してもし足りない。その判断を即決したのは菅首相だ。
次に私が高く評価するのは、特に福島原発事故について前例の無い情報開示をしたことである。これだけの生々しい情報を下手に公開するとパニックにする恐れがあったが、枝野官房長官の適切な説明はメディアと国民の冷静な対応の基調を作ったと評価する。海外から情報隠しを指摘されたこともあったが、初期の混乱を除けばむしろ過剰に情報を出しすぎ受け取る側の咀嚼能力を超えたと思われる場面もあった。
情報は不足か、過剰か
海外の原発事故報道にはいい加減で事実でないものが沢山あった事は既に投稿した。初期の情報不足が原因だけではなかったと私も考える。三流紙だけでなく信頼していた海外の著名な記者が、つまみ食いみたいないい加減な記事を書いているのにはショックを受けた。昨夜のNHKの深夜放送で今回のフランスの放射能汚染パニックについて、フランス人はチェルノブイリ原発事故で何も知らされなかった経験(トラウマ)から、政府や専門家が何を言おうと信じないのだという。
福島や茨城産の野菜に続き、東京都に始まった水道の放射能汚染が公表され、全国で風評被害や水などの商品が買い占められ品薄になったから、あまりフランス人を馬鹿にすることはできない。かくいう私の家族でも否応無く水騒動やオムツ騒動に巻き込まれ、背に腹は変えられず田舎で水を買って東京に送る羽目になった。それでも、この程度で収まっているので今回の情報公開が改善すべき点はあっても落第とまではいえないと思う。
超党派の震災復興体制をさっさと作れ
以上のように、引きこもりといわれるが菅首相だが、過去の政権では問題を残した重要な意思決定をしたと私は考える。東電を恫喝したというが今日の事態を考えるとそれ以外の選択など無かった。福島原発に行かなかったら逆の批判を受けた可能性が高い。ハリケーン・カトリーナでニューオーリンズが大被害を受けた時、ブッシュ大統領は現地を訪問せず大幅に支持率を落としたのが思い出される。9.11で小泉首相が直ぐNYに向かったのも意識したのかもしれない。
今最大の課題は超党派の震災復興体制の構築であり、やり方の問題でクレームをつけたくなる気持ちは分かるが野党も我慢して国民の為に一緒にやる仕組を早急に作って欲しい。菅首相は未だにマニフェストにこだわる一部民主党を切ってでもやる気概を持ってやって欲しい。特別復興税を設け全国民は痛みを負担すべきだ。ついでに、減税日本及び名古屋市民殿、減税分は諦めて全て東北地方の方に寄付してください。■