今は亡き自民党の中川昭一は、ネットでまだ頑張っているように思えるから不思議だ。それだけ、根強い支持があったからだろう。平成21年5月27日、東京大学の5月祭で講演した「三島由紀夫と東大全共闘の合意点」の内容が、中川の『日本を守るために日本人が考えておくべきこと』のなかに収録されている。それを読んでみて、私より1歳しか若くないこともあり、同じ世代だという思いを強くした。そこで中川が取り上げたのは『三島由紀夫と東大全共闘の対談』であった。ほとんど観念的な言葉の遊戯に終始したが、一つだけ理解し合えたことを、中川は重視したのだった。「全共闘と三島さんの共通点は、戦後のレジームを脱するということ。全共闘と三島さんというのは途中の思考回路がまったう違うわけですが、しかしこのままでは日本はダメになる。ダメにしていくのは戦後の知識人、保守的であろうが左翼的な思想であろうが、とにかく戦後の知識人が日本を引っぱっているのがダメだということで、途中激しい場面もありますが、大変前向きに議論が進んでいます」との感想を抱いたのである。暴力によって反対派を一掃しようとした全共闘運動を、中川は丸ごと容認したのではない。三島と議論がかみ合ったことに着目し、「彼らなりに考えていたんだなと思います」と評価したのだ。目下、日本は民主党政権が誕生したことで、戦後レジームにどっぷり浸かったままである。誰かが少しでもでも先に進める努力をしなければ、中川も浮かばれないのではなかろうか。
←戦後レジームからの脱却が必要だと思う方はクリックを