おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
「毒になる親」で一番イメージしやすいのは、このアルコール中毒の親かもしれません。
当初は、このアルコール中毒の親に育てられた子どもを「アダルト・チルドレン」と称していましたが、いつのまにか機能不全の親に育たられた子どものことを「アダルト・チルドレン」と拡大解釈されてしまいました。
話はそれまでにし、『毒になる親』には、こんなことが書かれています。
「家にアルコール中毒の人間がいるというのは、比喩的にいうならば、リビングルームに恐竜が居座っているようなものである。外部の人間から見れば、そんな巨大なものがそこにいるには歴然としており、とても無視できることではない。だが家族はその化け物に対してなすすべがなく、その無力感から、そんなものは自分たちの家にいないことにしてしまう」
さらに
「そういう家庭においては、『嘘』『言い訳』『秘密』が空気のようにあたりまえのことになっており、それが一緒に暮らしている子どもに計り知れない情緒の混乱を起こす」
と続きます。
片親の飲酒の問題についての「家の秘密」には、必ず次の3つの要素が含まれています。
(1)アルコール中毒の親本人による「事実の否定」
(2)本人以外のメンバー(たいていは配偶者と子ども)による「事実の否定」
(3)自分たちは”ノーマルな家”なのだという取りつくろい
アルコール中毒のもう一方の親の役割も重要です。
この本では、夫がアルコール中毒である場合、妻は夫の”協力者”であり、”共依存”の関係にあることが書かれていますが、このことは今日では定説です。
共依存者は、「事実の否定」をすることによってアルコール中毒の行動を黙認し、その相手が哀れなアル中であることを許し、その代わりに相手をコントロールする力をえていることがあり、相手が酔いつぶれると共に、一家を自分の好きなように動かす自由を手に入れているからであり、共依存者が”ダメ人間”をパートナーにするのは、「自分が”ダメ人間”であることを自覚してのことばかりでなく、相手と比較して自分の方が優れていると感じることができるためのこともある」と手厳しい書き方をしています。
大事なことは子どもへの影響です。
ポイントだけ示せば、この本では、次のようなことが書かれています。
(1)親を救うことと”ノーマルな家”の見せかけを維持するための空しい努力にエネルギーが注が割かれるあまり、自分自身の基本的なニーズにほとんど注意を払うことができない。その結果、心の支えを必要とするのに、その子どもは親から心の支えが得られないという自己矛盾に陥る。
(2)「親子の役割の逆転」を学んでしまい、子どもの頃から親との関係を通じて培われた「問題のある人を救いたがる性格」ができてしまう。
(3)さらに、「今度こそうまくやれるに違いない」と思って過去のトラブルをまた繰り返してしまうという「衝動強迫的な反復」を無意識的に演じてしまう。このことで「二度とアル中の人間とは関わりを持つものか」と思っていても、心の奥底に根づいた無意識の力は、意識の力よりもはるかに強力に作用する。
(4)ごく若いうちにアル中の親に酒の味を覚えさせられることによって、アル中の親を持つ子どものうち、少なくとも4人に一人は自分もある中になる。
アル中の親を持った子どもは、「激しい怒り」「うつ」「喜びの喪失」「猜疑心(さいぎしん)」「人間関係のトラブル」などの問題点を親から受け継ぎ、同時に「不必要で過剰な義務感」を背負い、自分も飲むことになった場合は、「過度の飲酒」という習慣も受け継いでしまう。
(5)重要な人間関係を学ぶ相手である親から信頼を学べないことによって「誰も信じられない」という信頼感の喪失が生じ、恋愛関係でも友人関係でも、他人といい関係を保つ心が蝕まれる。
ただ、スーザン・フォワードは、問題点を指摘するだけでなく、この章の最後の部分で次の言葉で勇気づけてくれます。
「もしあなたがアル中の親の子どもだったら、自分の人生を自分の手に取り戻すためのカギは、そのような親を変えなくてもあなたは変わることができるのだと自覚することだ。
あなたの幸福は、あなたの親がどんな親であるかによって左右されなければならない理由はないのである。
たとえ親はまったく変わらなくとも、あなたは子ども時代のトラウマを乗り越え、親によって支配されている人生を克服することができる。
あなたに必要なのは、それをやり抜く決意と実行力だけなのだ」
いかがですか?
これから金沢に出かけます。
<お目休めコーナー> 5月の花(27)
