おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
昨日(6月16日)も私はお休みでした。
カミさんとランチと買い物に出かける以外は家にいました。
ランチをしながら 松丸飛鳥さん がフェイスブック(6月14日 23:25) で紹介していた
雨宮処凛さん(作家・活動家)のブログ 『つみびと』から、大阪二児置き去り死事件を思う。
を話題にしていました。
「いい母親」で居続けようとする女性を誰も助けず、2人の子供が死んだ。
と副題がある、2010年夏、大阪のマンションに子ども二人を置き去りにして死なせたシングルマザーが逮捕された、当時は「ネグレクト」として話題になった事件のことを巡ってです。
私たち夫婦は、こういう話題で話をすることが多いです。
どうしても私は、情的な部分をカットして男性視点で物事を見てしまう癖がありますが、カミさんは別のものの見方をするので、とても参考になります。
このやり取りがもとになって、私は家に帰って「共同体感覚」についてのスライドを作ることができました。
さて、私が遅読で学んでいる『アドラー心理学を生きる ― 勇気のハンドブック』(ジュリア・ヤン、アラン・ミリレン&マーク・ブラゲン 著/今井康博・日野遼香 訳、川島書店 3,800円+税)から【ライフタスク】の紹介です。
今までは、この本をもとに3回ほどブログに書いていますので、ご興味のある方はお読みください。
5月17日付けブログ 遅読で学ぶアドラー心理学:『アドラー心理学を生きる ― 勇気のハンドブック』
6月4日付けブログ 遅読で学ぶアドラー心理学:『アドラー心理学を生きる』から【勇気】について
6月11日付けブログ 遅読で学ぶアドラー心理学:『アドラー心理学を生きる』から【共同体感覚】について
今回は、第3章の「人生のタスク」(いわゆる【ライフタスク】)がテーマになります。
著者は「社会生活における勇気は、困難に打ち勝つためにどうように努力をするかに最もよく現れる」とし、アドラーの「仕事」「交友」「愛」―著者によれば「仕事」「性」「社会生活」-をまず紹介します。
その上でアドラーの弟子たち(最初は、R.ドライカースとH.モサック)が3つのタスクに2つの実存主義的タスクを加えた、とし、(1)我々自身と(2)宇宙と調和する能力をもとに共同体感覚を理想的な目標としつつ、我々が問題や挑戦を乗り越え、貢献と協力によりこれらのタスクを果たそうとすることだと書いています。
特徴的なのは、この本では、日本で伝えられている「愛」と「交友(友情)」のタスクの範疇がやや違っていることです。
愛のタスクは「親密のタスク」とも呼ばれ、「2人の人間にの間に存在する最も親密な結びつきであり、最も強く近い感情的な関係を表す愛」というドライカースの定義をもとにしています。
それに対して「交友(友情)」のタスクを「家族やコミュニティの関係を含む」と書いていることからして、親子関係は「交友(友情)」のタスクとなっていて、やや違和感を持つことになるかもしれません。
ドライカースとモサックが付け加えた、いわゆる「セルフ」と「スピリチュアル」のタスクについては、何度も「実存主義的」だとして、概要次のようにまとめています。
「セルフタスク」・・・・個人が自身とどのように上手にやっていくか、どのように自身に対処するかのタスク。
「自己受容」や「セルフケア」とも呼ばれる。
本書では「存在」のタスク。
「スピリチュアルタスク」・・・・人間が宇宙との関係において自身を確立する問題と関連があるタスク。
実存主義的、または超越論的な性質から見た人類の存在意義を気づかせてくれるような、「宇宙的な埋め込み」(embeddedness)。
このタスクは、「スピリチュアルタスクの他に、存在命題、意味の追求、形而上学、メタ心理学、存在論」といったような複数の名前で呼ばれている。
本書では「所属」のタスク(宇宙との調和)。
ところで、「embeddedness」というのは、アドラー心理学の英語の本によく出てくる表現で、意味どおりには「埋め込まれているもの」と表しますが、早稲田大学の向後千春先生は、アドラー心理学の基本的な考え方の1つを「社会統合論」(social embeddedness)としています。
わかりやすくまとめると、「ある状況での特定の人(相手役)との間の対人関係」のことで、「スピリチュアルタスク」に即して言うと、訳者の今井さんの訳注をもじれば、「宇宙とのつながりの中の小宇宙としての個人」とも言えそうです。
第3章の「人生のタスク」の最後の部分では、アドラーにとっての勇気とライフタスクの関係をまとめています。
ただし、訳語を私なりに変えていることをご承知おきください。
「アドラーにとって勇気とは、真の協力、調整の非建設な(原訳では「役に立たない」)面から建設的な(原訳では「役に立つ」)面への動き、人生のタスクと直面すること、間違いを犯す覚悟、そして所属感を持つことの前提条件である」
この本の特徴は、(1)ライフタスクを5つに区分していること、(2)勇気はライフタスクとの関連で終始問われること、としているようです。
私は、著者の記述をそのまま鵜呑みにするのではなく、出典はどこか、著者なりの創造性はどこにあるのか、と絶えず問いかけながら読んでいるので、そのため超スローペースになっています。
◆現代アドラー心理学による「ライフタスク」については、ペルグリーノ博士(モントリオール個人心理学研究所 理事長)を講師としてカナダからお迎えし、下記のとおり講座を開催します。
「5つのライフタスク(セクシュアリティーを中心に)」(通訳・日本語テキスト付き)
日 時:8月10・11日(土・日) それぞれ10:00~17:00
受講料:会員 48,600円、一般 54,000円(税込・テキストつき)
会 場:社会福祉法人 南風会 シャロームみなみ風 ホール
(東京都新宿区弁天町32-6 電話:03-5579-8412 )
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