〇大阪市立美術館 特別展『木×仏像(きとぶつぞう)-飛鳥仏から円空へ 日本の木彫仏1000年』(2017年4月8日~6月4日)
仏像の素材となった木の種類、あるいは木材の用いられ方などに注目し、日本の木彫仏の魅力を再発見することを目的とした企画展。同館の1階を全て使った展示で、出品は55件(唐招提寺の薬師如来立像と伝獅子吼菩薩立像が入れ替わるだけで、他は展示替えなし)。
導入部は時代順で、顔の小さい、まっすぐ突っ立ったような木造天王像から。現存稀な飛鳥時代の天王像だという。芸大美術館の所蔵だというが、知らなかった。立て襟のマント(?)がおしゃれ。その奥の、顔が大きく体躯が平べったい菩薩立像は、いつも東京国立博物館でお目にかかっているもの。おや、塑像も出ているんだ、と思ったら、その隣りに坐仏をかたどった塑像心木が並べられていた。唐招提寺の伝獅子吼菩薩立像、東大寺の試みの大仏など、奈良時代はおなじみの仏像が並ぶ。
短い廊下の先に、次の展示室(平安時代)の一部が見えており、暗闇の中に浮かんでいたのが、宝誌和尚立像の姿。巧い演出だなあ~。京博で何度もお目にかかっているけど、展示ケースなしで、360度、あらゆる方向から眺めることができたのは初めてではないかと思う。今回の展示は、ほぼ全ての仏像を(展示ケース入りの場合でも)360度の方位から眺めることができて、平安時代の一木造りの仏像は、正面は芸術的に造り込んでいても、背面にまわるとズボッとしたシルエットで「木(樹)」そのものの面影を残している場合が多い。ちなみに宝誌和尚立像は、なぜか右の足元のあたりに丸い大きな穴が開いていて、不思議だった。側面から見たときの、外側の顔と内側の菩薩面の鼻や唇のラインが一直線に揃うところもすごい。あと、両手を覆うナタ模様(文身みたい)にも初めて気づいた。
大阪・蓮花寺の地蔵菩薩立像は、顔や体を起伏の強い木目が覆っており、一種近寄りがたい雰囲気。解説によれば、長年の風喰による損傷なのだという。そんなこともあり得るのか。大阪・三津寺の地蔵菩薩立像は、衣文の彫り込みが少なく、肉厚でつるりとした雰囲気。当然だが、ご当地・大阪の仏像が多い気がした。大阪の古寺は、まだ回り切れていないので嬉しい。それから、どこかで見たような仏像と思ったら、櫟野寺の仏像も複数来ていた。
展示室をめぐって、第1会場が終了。第2会場はホールの反対側の大展示室で、ざっと30躯くらいの仏像が奥まで並んでいる。こういう空間、大好きだ。入ってすぐは、大阪・河合寺の持国天と多聞天。隅々まで造形に緊張感があって破綻がないのは、寄木造ならではだと思う。多聞天が五鈷杵を振り上げ、構えているのが珍しい気がした。
とか言っていたら、円空の秋葉権現像三体はずるい。なんだよ、この造形。長髪、長い衣、カラスのように尖ったくちばしの秋葉権現は、ヒツジみたいな顔をしたキツネの上に立っている。大阪・大門寺の蔵王権現立像が三躯ならんだ様子には、申し訳ないけど吹き出してしまった。ダンスのストップモーションみたいでかわいい。でも作り手の仏師にとっては「重心のバランスが重要」って、やっぱりそうなんだな。
会場では、大雑把に素材が「広葉樹」か「針葉樹」かを表示したり、年輪の幅から「のびのび育った大樹」を想像してみたり、これまでにない仏像の楽しみ方が提示されていたが、個人的には十分消化し切れなかった。今後、もう少し素材である木のことが分かるようになりたいと思う。本展の図録はゆっくり読んで楽しみたい。仏像の正面だけでなく、背面の写真を収めたものが多くて貴重である。
2階はコレクション展。絵巻物撰に『新蔵人物語絵巻』が出ていたのが収穫。ほかに奈良・平安の写経、近代絵画など。
仏像の素材となった木の種類、あるいは木材の用いられ方などに注目し、日本の木彫仏の魅力を再発見することを目的とした企画展。同館の1階を全て使った展示で、出品は55件(唐招提寺の薬師如来立像と伝獅子吼菩薩立像が入れ替わるだけで、他は展示替えなし)。
導入部は時代順で、顔の小さい、まっすぐ突っ立ったような木造天王像から。現存稀な飛鳥時代の天王像だという。芸大美術館の所蔵だというが、知らなかった。立て襟のマント(?)がおしゃれ。その奥の、顔が大きく体躯が平べったい菩薩立像は、いつも東京国立博物館でお目にかかっているもの。おや、塑像も出ているんだ、と思ったら、その隣りに坐仏をかたどった塑像心木が並べられていた。唐招提寺の伝獅子吼菩薩立像、東大寺の試みの大仏など、奈良時代はおなじみの仏像が並ぶ。
短い廊下の先に、次の展示室(平安時代)の一部が見えており、暗闇の中に浮かんでいたのが、宝誌和尚立像の姿。巧い演出だなあ~。京博で何度もお目にかかっているけど、展示ケースなしで、360度、あらゆる方向から眺めることができたのは初めてではないかと思う。今回の展示は、ほぼ全ての仏像を(展示ケース入りの場合でも)360度の方位から眺めることができて、平安時代の一木造りの仏像は、正面は芸術的に造り込んでいても、背面にまわるとズボッとしたシルエットで「木(樹)」そのものの面影を残している場合が多い。ちなみに宝誌和尚立像は、なぜか右の足元のあたりに丸い大きな穴が開いていて、不思議だった。側面から見たときの、外側の顔と内側の菩薩面の鼻や唇のラインが一直線に揃うところもすごい。あと、両手を覆うナタ模様(文身みたい)にも初めて気づいた。
大阪・蓮花寺の地蔵菩薩立像は、顔や体を起伏の強い木目が覆っており、一種近寄りがたい雰囲気。解説によれば、長年の風喰による損傷なのだという。そんなこともあり得るのか。大阪・三津寺の地蔵菩薩立像は、衣文の彫り込みが少なく、肉厚でつるりとした雰囲気。当然だが、ご当地・大阪の仏像が多い気がした。大阪の古寺は、まだ回り切れていないので嬉しい。それから、どこかで見たような仏像と思ったら、櫟野寺の仏像も複数来ていた。
展示室をめぐって、第1会場が終了。第2会場はホールの反対側の大展示室で、ざっと30躯くらいの仏像が奥まで並んでいる。こういう空間、大好きだ。入ってすぐは、大阪・河合寺の持国天と多聞天。隅々まで造形に緊張感があって破綻がないのは、寄木造ならではだと思う。多聞天が五鈷杵を振り上げ、構えているのが珍しい気がした。
とか言っていたら、円空の秋葉権現像三体はずるい。なんだよ、この造形。長髪、長い衣、カラスのように尖ったくちばしの秋葉権現は、ヒツジみたいな顔をしたキツネの上に立っている。大阪・大門寺の蔵王権現立像が三躯ならんだ様子には、申し訳ないけど吹き出してしまった。ダンスのストップモーションみたいでかわいい。でも作り手の仏師にとっては「重心のバランスが重要」って、やっぱりそうなんだな。
会場では、大雑把に素材が「広葉樹」か「針葉樹」かを表示したり、年輪の幅から「のびのび育った大樹」を想像してみたり、これまでにない仏像の楽しみ方が提示されていたが、個人的には十分消化し切れなかった。今後、もう少し素材である木のことが分かるようになりたいと思う。本展の図録はゆっくり読んで楽しみたい。仏像の正面だけでなく、背面の写真を収めたものが多くて貴重である。
2階はコレクション展。絵巻物撰に『新蔵人物語絵巻』が出ていたのが収穫。ほかに奈良・平安の写経、近代絵画など。