今年も1月2日に東京国立博物館の吉例『博物館に初もうで』に出かけた。ホームページによると、今年で12年目。「申」から始まった干支も今年の「未」でひと回りしたそうだ。もちろん私は12年間、皆勤である。参観者は年々増えているのではないかと思う。年間を通じて、本館(平常展)にいちばん人が多いのは、正月松の内ではないかな。
■本館・特別1室 『博物館に初もうで~ひつじと吉祥~』(2015年1月2日~1月12日)
12年目でようやく出番のまわってきたヒツジ。洋の東西を問わず、人類とかかわりが深く、「吉祥」イメージとの結びつきも強い。でもヤギとヒツジって、あまり区別されていなかったような気がする。
ヒツジと関係ないが、これは!と思ったのは、中国・元代の『寿星図』。あまり同館で見た記憶がない。曲がった杖、黒い帽子、地味な濃茶色の衣の、鼻の大きい(でも胡人ではない?)長髯の男性が描かれている。隣りに、伝・雪舟筆『梅下寿老図』が並んでいて、こちらは髭や眉の白い老人の姿に置き換えられているものの、中国絵画の『寿星図』を本にしたことが明らかであった。
■本館 新春特別公開(2014年1月2日~1月13日)など
11室(彫刻)は、吉祥天・弁財天・毘沙門天など、天部の彫刻が揃って、それとなく目出度さを演出。文化庁所蔵の大黒天立像(室町時代・快兼作)がめずらしかった。まるまるした顔と体型、大きな袋に打ち出の小槌。ほぼ近世の「福神」の要素を備えながら、どこか「武人」の威圧感を残している。もとはセゾン美術館が所有していたものらしい。
12室(漆工)は、栃木・輪王寺蔵『住江蒔絵手箱』に見とれた。蒔絵と言っても、金銀を使わない(目立たない)漆工が好き。赤い鳥居が可愛らしかった。18室(近代の美術)は、従来、絵画と彫刻だけだったのが、最近、工芸(木工・金工・陶芸等)も置かれるようになって、面白いと思っていたら、今回は書道作品も混じるようになった。何でもありなところが、日本の近代の曙っぽい。島崎柳塢筆『美音』が、古い日本の家族の姿を伝えていた。
2階へ。1室(日本美術のあけぼの-縄文・弥生・古墳)は、埴輪『猪』(大阪府藤井寺市出土、大阪府立近つ飛鳥博物館蔵)が目立っていたが、なぜヒツジ年にイノシシ? 2室(国宝室)は『松林図屏風』で、例によって大混雑だったので、流し見で通り抜け。3室(宮廷の美術-平安~室町)は「『源氏物語』の美術」の特集だったのか。室町時代の『源氏物語図扇面』6種が珍しかった。
7室(屏風と襖絵-安土桃山~江戸)はよかったなあ。狩野永祥筆『雪景山水図屏風』と伊藤若冲筆『松梅群鶏図屏風』と池大雅筆『西湖春景銭塘観潮図屏風』という、個性的な3点。特に永祥(1810-1886)と大雅の、風景の「掴み取り方」の自由さに興奮した。
■東洋館・8室 『中国の絵画 吉祥のかたち』(2015年1月2日~1月25日)
東洋館(アジアギャラリー)はいつものように8室(中国の絵画と書跡)から。清末、広東を中心に、西洋への輸出やお土産用に作られた「トレードペインティング」(貿易絵画)が面白かった。確か、長崎や江戸にも同様の絵画があるはず。風景がきっちり描かれている割には生気が感じられない(人間を描くことに関心が薄い)ものが多く、どこか幻想絵画の趣きがあって引かれる。「貿易港の賑わいを描いた華やかな本作も正月にふさわしく」という解説は、ややこじつけ気味。
書跡は、米芾(べいふつ)の臨書の軸を見つけて、上手いなあ、筆者は誰?とよく見たら、康熙帝だったので笑ってしまった。料紙も上々で、華やか。隣りに「どうだ巧いだろう」と言いたげな乾隆帝の書もあった。おめでたくて、何より。この二人の書、欲しいなあ。
■本館・特別1室 『博物館に初もうで~ひつじと吉祥~』(2015年1月2日~1月12日)
12年目でようやく出番のまわってきたヒツジ。洋の東西を問わず、人類とかかわりが深く、「吉祥」イメージとの結びつきも強い。でもヤギとヒツジって、あまり区別されていなかったような気がする。
ヒツジと関係ないが、これは!と思ったのは、中国・元代の『寿星図』。あまり同館で見た記憶がない。曲がった杖、黒い帽子、地味な濃茶色の衣の、鼻の大きい(でも胡人ではない?)長髯の男性が描かれている。隣りに、伝・雪舟筆『梅下寿老図』が並んでいて、こちらは髭や眉の白い老人の姿に置き換えられているものの、中国絵画の『寿星図』を本にしたことが明らかであった。
■本館 新春特別公開(2014年1月2日~1月13日)など
11室(彫刻)は、吉祥天・弁財天・毘沙門天など、天部の彫刻が揃って、それとなく目出度さを演出。文化庁所蔵の大黒天立像(室町時代・快兼作)がめずらしかった。まるまるした顔と体型、大きな袋に打ち出の小槌。ほぼ近世の「福神」の要素を備えながら、どこか「武人」の威圧感を残している。もとはセゾン美術館が所有していたものらしい。
12室(漆工)は、栃木・輪王寺蔵『住江蒔絵手箱』に見とれた。蒔絵と言っても、金銀を使わない(目立たない)漆工が好き。赤い鳥居が可愛らしかった。18室(近代の美術)は、従来、絵画と彫刻だけだったのが、最近、工芸(木工・金工・陶芸等)も置かれるようになって、面白いと思っていたら、今回は書道作品も混じるようになった。何でもありなところが、日本の近代の曙っぽい。島崎柳塢筆『美音』が、古い日本の家族の姿を伝えていた。
2階へ。1室(日本美術のあけぼの-縄文・弥生・古墳)は、埴輪『猪』(大阪府藤井寺市出土、大阪府立近つ飛鳥博物館蔵)が目立っていたが、なぜヒツジ年にイノシシ? 2室(国宝室)は『松林図屏風』で、例によって大混雑だったので、流し見で通り抜け。3室(宮廷の美術-平安~室町)は「『源氏物語』の美術」の特集だったのか。室町時代の『源氏物語図扇面』6種が珍しかった。
7室(屏風と襖絵-安土桃山~江戸)はよかったなあ。狩野永祥筆『雪景山水図屏風』と伊藤若冲筆『松梅群鶏図屏風』と池大雅筆『西湖春景銭塘観潮図屏風』という、個性的な3点。特に永祥(1810-1886)と大雅の、風景の「掴み取り方」の自由さに興奮した。
■東洋館・8室 『中国の絵画 吉祥のかたち』(2015年1月2日~1月25日)
東洋館(アジアギャラリー)はいつものように8室(中国の絵画と書跡)から。清末、広東を中心に、西洋への輸出やお土産用に作られた「トレードペインティング」(貿易絵画)が面白かった。確か、長崎や江戸にも同様の絵画があるはず。風景がきっちり描かれている割には生気が感じられない(人間を描くことに関心が薄い)ものが多く、どこか幻想絵画の趣きがあって引かれる。「貿易港の賑わいを描いた華やかな本作も正月にふさわしく」という解説は、ややこじつけ気味。
書跡は、米芾(べいふつ)の臨書の軸を見つけて、上手いなあ、筆者は誰?とよく見たら、康熙帝だったので笑ってしまった。料紙も上々で、華やか。隣りに「どうだ巧いだろう」と言いたげな乾隆帝の書もあった。おめでたくて、何より。この二人の書、欲しいなあ。