ひょんなことで映画を見た。といっても2年前に公開されている邦画「アイアムまきもと」という阿部サダヲ主演の映画がテレビで放映されていた。そのロケ先がどうしても見たことのある場所のようで気になって調べてみたところ、やっぱりということで腰を上げて出かけてみることにした。
映画の内容は、海外のヒューマンドラマを原作に、日本版にシリアスでもありコミカルでもあるが、何か社会問題を問いかける内容のもの。身寄りがなく亡くなった方の葬儀や埋葬を担当する市役所「おみおくり係」の牧本(阿部サダヲ)のお話だが、ここでストーリーには触れないことにする。
冒頭、「庄内市役所」が映し出され、その後の風景などを見ても、そこ(ロケ地)が山形県庄内地方であるということが容易に理解できる。市役所は酒田市役所、住宅は鶴岡市の市営住宅、火葬場は庄内町ということだが、墓地だけは景色が変わるのでどこだろうと調べると山形市の霊園だそうで、いずれにしても庄内・山形でのロケであることが分かる。庄内を舞台にする映画、多いですよね!(写真下:映画のPRとロケ地紹介のパンプレット。酒田観光物産協会「やまがた酒田さんぽ」から掲載。)
確かに山形市の霊園ロケ地ほど違和感は感じなかったのだが、庄内地方にも岩場の海岸線があるのに、海岸端にある独特の形の岩と漁港は見たことがある風景。そう、お隣の町・村上市の笹川流れにある寝屋(ねや)漁港の風景だ。「鉾立岩」は笹川流れの奇岩の中でもシンボリックな岩場ですからね。
映画で、市営住宅で亡くなった蕪木(宇崎竜童)の家族を探すため、漁港で食堂を営む蕪木の元恋人・みはる(宮沢りえ)を訪ねた場所が寝屋だった。鶴岡市にも、由良(ゆら)や小波渡(こばと)などの漁港はあるのだが、多分、鶴岡市の海岸線を南下しながらロケ候補地を探し、港湾指定の鼠ヶ関港へ来たところでもう少し南へ、県境を越えた第二種漁港・寝屋港にたどり着いたのではないかと予想している。
映画の解説やロケ地紹介でもほとんどこの寝屋漁港については触れられていないが、鉾立岩が見える場所で、港の防波堤、入江を挟んだロケーションに加え、雰囲気を醸し出す食堂(実は、JFの直売所)の景色がこの映画の監督・水田伸生が描いたイメージだったに違いない。
映画の中ではみはるの働く「みはる食堂」、実在するのはJF新潟漁協山北支所の直売所で、屋号は「新鮮屋」という。漁港で水揚げされた新鮮な魚介を提供する店だが、これまた口コミなどで調べてみるとこの店が気になって仕方なくなる。(こちらも詳しくは触れないが、評価が真っ二つに分かれているので各自で検索してほしい。)
店は映画のシーンそのものにテラス席テーブル席が並び、そこから漁港や鉾立岩が望める。宮沢りえとは相当のギャップで接客に対応するお兄さんも、ニヤリとしてしまうくらいこの土地の魅力を醸し出す。そんな魅力を感じてだろうか、山形県ロケに唯一新潟県の地が食い込むほどのシチュエーションが揃っていたんだろうな。(ロケ中に阿部サダヲと直売所のお兄さんの会話はあったのだろうか?どんな会話だったのか気になる。)
私が訪れたのは8月末。この地方では岩ガキの季節で、「笹川流れ」といわれる風光明媚な海岸線沿いの食堂や民宿では岩ガキが提供される。直売所・新鮮屋でも新鮮な岩ガキの殻をその場でむいて提供している。テラス席に一人座って漁港を眺めながら美味しくいただきました。1個800円。これは紛れもなく口コミでも高評価をしてもいい品でした。(写真下:岩カキの写真で、レモン果汁は持込品です。)