ダムの季節。特に春先は、新緑がまぶしい季節の中、雪解けも進みアクセスも容易になる上、計画放流、観光放流などの見どころも作ってくれる。今回はお隣山形県の四大ダムを二か所ずつ二回に分けて紹介する。いずれも東北地方整備局が管理する直轄ダムだ。
初めに白川ダム。新潟県からは近い場所にある。以前紹介した横川ダムは、山形県にありながら北陸地方整備局管内。分水嶺は山形県小国町と同県飯豊町の境界にあって、そこを越えると東北地方整備局が所管する最上川水系、その支流である白川上流にあるのが「白川ダム」だ。
早くから洪水調整目的の河川改修が必要とされてきた最上川だが、白川ダムも横川ダム(荒川水系)と同じく建設の大きなきっかけとなったのが1967年(昭和42年)の羽越豪雨だった。流域面積を飯豊山系をすっぽりカバーすることから、当初の計画よりも大幅に機能を増大させていった。
中央コア型ロックフィル式。右岸堤体が上流部にカーブを描いているのが美しい。堤高は66メートル、堤頂長419メートル。洪水調整のほかに、不特定利水、かんがい、工業用水、発電とフルカバーの多目的ダムだ。
ダム湖は「白川湖」。ダムの数キロ上流には「白川ダム湖岸公園」があり、「源流の森」や温泉・宿泊施設のある「白川荘」、パークゴルフやオートキャンプ場などのレジャー施設があって、都市部からはかなり離れている場所だが大勢の観光客を集めている。
特に、貯水量が多くなるゴールデンウィークからの5月中旬にかけて注目を集めているのが「水没林」。新緑が芽生えたこの時期の景観を楽しみに、これも流行りなのかカヌーやカヤックといったアウトドア派が集まっているのだ。
この季節限定はまだある。「朝霧」が発生しやすい。朝鏡のようになった湖面に水没林とその影が映し出され、それをほのかに朝霧が包んでいる情景、思い浮かべてもきれいなのだが、その写真を撮影しようという風景写真愛好家も朝早くから訪れる場所でもあるそうだ。
ドカン!と存在感のある写真上のダムは「長井ダム」。長井市を流れる最上川水系白川の支流「野川」にある。長井市からも近い場所に、この巨大なダムが存在することは、最近知ったことでもある。
というのも建設年(完成)が2011年。10年前のデビュー。当初山形県により計画・調査されたが、直轄事業として1979年着手。32年という長い月日を費やして「長井ダム」が建設されるに至った。やはり洪水調整を主目的とした多目的ダムだ。
ご覧のとおり重厚な重力コンクリート式ダム。堤高は125メートルで存在感抜群。東北整備局管内では岩手県の胆沢(いさわ)ダム(127メートル)に次いで二番目の高さを誇る。ダムへ行く途中、比較的高い位置から正面を見渡せる展望所がある。
ダム湖は「ながい百秋湖」という。一般公募により命名されたこの湖の中ほどに「竜神大橋」がかかっている。その橋のたもとの駐車場に小さな看板が設置されている。ダムの下にダムがあるとの案内板だ。
実はこのながい百秋湖の下には、山形県初の多目的ダムである「管野ダム」というダムがあったが、長井ダム建設によりその役目を終え水没しているのである。(管理事務所にも説明や当時のダムの写真が展示されている。)
55年もの間活躍した管野ダムだが、管理事務所の方に話を聞いてみると、「役目を終えたとは言っても、長井ダムにとっては見えない水の中で砂防ダムの役目をしてくれている」とのこと。いまでも活躍しているんだ、管野ダム!もう一つ、ダム物語が追加されて、山形五大ダムにしないといけないかな?