決して紅葉狩りが目的ではないが、1週間ほど前の休日のこの日は天気が良かったので、三面川のダムを見に行った。日本海沿岸東北自動車道の「朝日三面IC」で降りて、目印は鷲ケ巣山の方向。
城下町村上や岩船地域を潤す母なる川・三面川は、ご承知のとおり古くから鮭の遡上で知られ、鮭文化を作ってきた川であり、県北の一等米・コシヒカリで「岩船米」のブランドを確立してきた源であるといっていい。
その本流には、三面ダムと奥三面ダムの二つのダムと、支流の猿田川には新潟県企業局が設置する発電専用の猿田ダムがあるが、今回は三面ダムと奥三面ダムを紹介する。
三面ダムは、1953年(昭和28年)、新潟県営ダムとしては一番最初に設置されたダムで、重力コンクリート式、高さ82メートル。三面川流域の洪水防止、河川の正常な機能維持と発電のために設置された。
この地域では1967年(昭和42年)に発生した「羽越大豪雨」が発生して、農地等に甚大な被害が出た地域であるが、このダムがあったおかげで人的被害はなかったといわれている。
私の地元である胎内川流域や、山形県を源流とする荒川の流域には死者・行方不明者が多数出たことから、治水を目的とするダムの重要性を県内に知らしめたことによって、近隣にもダムの建設が進められるようになった。
上の写真は、堤頂から三面ダム湖を見たもの。この少し上流に「二子島森林公園」、下流には「縄文の里・朝日三面歴史交流館」などがある。
早くから景勝地として公園整備などが行われて、二子島森林公園にはキャンプ場や遊歩道が整備されており、新緑・紅葉の時期には訪れる人も多く「にいがた景勝100選」にも選ばれている。
ダム湖に浮かぶ二子島へは浮桟橋を使って渡ることもできるし、サイクルボートなどもある。ガーレージキャンプを抜け出し孫とオートキャンプ場で車中泊?なんてことも考えてしまう。
三面ダムの上流にあるのが「奥三面ダム」。やはり県の施設で、羽越水害を契機に治水を目的に1971年着工(本体着工1991年)、長い歳月をかけて2001年に完成したダムだ。
写真をご覧いただいて分かるとおりアーチ式のコンクリートダムである。堤高116メートル、堤頂長244メートル、総貯水量12,550万立方メートル。平成16年度ダム工学会賞技術賞を受賞。特にアーチ状の堤体が美しいダムだ。
新潟県内のアーチ式ダムというと、奥三面ダムのほかは黒又川第二ダム(魚沼市、電源開発)とカッサ川ダム(湯沢町、東京電力)の3基だけ。その中でも上記の諸元を比しても奥三面ダムが県内最大のアーチダムということになる。
なぜ建設の際、そんなにも歳月をかけたのか?まず磐梯朝日国立公園内にあり、環境影響を抑えるということもさることながら、マタギの里として知られる旧三面集落が水没することに起源する。
この三面集落には縄文自体を中心とした「奥三面遺跡群」があって、この発掘調査を終えてから本格的工事に取り掛かったという経緯があった。(遺跡から発掘された遺物・史料は、「縄文の里・朝日三面歴史交流館」で公開。)
ダム建設に利用された「朝日スーパー林道」は、なかなか厳しい道路(写真上)ではあるが山形県鶴岡市を結び、ダム湖畔をダム湖畔を通る林道は小国町へと通じている(現在、通行止め。随分若い頃、行ったことがあるが、ここの道も厳しかった、今は整備されてかどうか分からないが。)。