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「黒衣の刺客」 ホウ シャオシェン監督 台湾中国香港仏 ◯ ☆
唐代の中国を再現した衣装や調度品、中国の水墨画のような絶景地や日本の奈良の由緒ある寺院などで撮影された独創的な映像と情景に合う音楽が秀逸です。セリフは少なく表情だけで思いを伝える俳優の絶妙な演技も見どころです。
女刺客となって故郷に戻った「隠娘」(スー チー)は、女道士から暴君の田季安(チャン チェン)の暗殺を命じられます。ところが彼は隠娘の元婚約者でした。一度は暗殺を試みますが、子どもがそばで眠っている姿を見るととどめを刺すことができませんでした。「暗殺者として情は無用」と道士から諭されますが、「なぜ殺さなければならないのか。」という疑問は拭えませんでした。隠娘が命を狙われた時に助けてくれた日本人青年(妻夫木聡)と出会い、隠娘は別の生き方を模索するのでした。
世界中でいやというほどの暴力の応酬がなされている今だからこそ「殺さない刺客」の存在は「暴力では何も解決しない。」という監督の思いを伝えているのではないでしょうか。映画は総合芸術であることを改めて思い起こさせる秀作です。(☆)
タバコは、なし。無煙です。