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「人数の町」 荒木伸二監督 ✗
キノフィルムズ主催のコンクール入賞作品の映画化です。
借金取りに追われ暴行を受けていた蒼山(中村倫也 なかむらともや)は黄色いつなぎを着た男に助けられ、ある施設に誘われます。そこでは衣食住の不安はなく妊娠以外は男女の会話や関わりも自由でした。仕事はネットの書き込み、なりすまし選挙、行列のサクラなどの簡単なことでした。ただ、監視カメラだけでなくフェンスを超えてその施設を出ようとすると警告音が頭に鳴り響く装置が首に埋め込まれていました。
暴力夫から母子で逃れ行方不明になっている妹の緑(立花恵理)を探していた姉紅子(石橋静河)は謎を知っていそうな男からその施設を紹介されるのでした。
施設には自殺未遂者、ネット難民、自己破産者などさまざまな社会システムの犠牲者が収容されています。いわゆる「貧困ビジネス」の大型版といえます。借金取りや暴力男に追われる心配はなく「ここは自由だ」と黄色男が胸を張りますが、戸籍を取り上げられ保健証もなく、たとえ命がけで脱出しても社会では生きていけない、「カゴの中の自由」が描かれています。
テーマは大変興味深いものがあります。実は私たちは作られた格差社会の中、気が付かないうちに見えない監視網に囲まれた中、誰かを犠牲にした自由を謳歌しているだけなのかもしれません。
生産的な労働の喜びを与えないところがこの施設の肝です。農業とか手仕事とかを体験させたらみんな生き生きして言うことを効かなくなってしまいますね。
タバコは、施設内に喫煙所があり何人かが喫煙していました。あのタバコはどうやって手に入れたのか不明です。(✗)