「椿の庭」 上田義彦監督 ○
写真家の監督が長い間温めていた脚本を映画化しました。
緑に囲まれ、その間から海が見える高台の古い家で暮らす絹子(富司純子)は、娘(鈴木京香)ともうひとりの娘の忘れ形見孫の渚(シム ウンギョン)と3人で夫の四十九日を迎えていました。その後相続の関係から家を手放さなければならなくなります。「たくさんの記憶が残るこの家から離れたら自分はどうなるのか。」と不安になる絹子ですが、現実は厳しく「遅れると課徴金がかなり高額になります」と言われるのでした。
椿だけでなく庭の植物が自然光のおかげかしっとり美しい映像で観客の目を楽しませます。おおげさな事件は起きませんし、ほとんど説明のない脚本ですが(場所の説明もはっきりとはしていません)、観客はそれほど困りません。静かな映像を観て心地よいレコードが奏でる音楽を聴いているだけで満たされていきます。
ことの成り行きも測量士役の宇野祥平のひとこと「もったいないね」で済ませます。
57,「地獄の花園」と同じ「映画」というカテゴリーにまとめられるという、映画の持つ多様性に映画界の懐の大きさを感じます。また、シム ウンギョンだけでなく韓国の俳優チャン チェンも出演し、文化面では協力しあっていることがいいですね。
タバコは、なし。無煙です。(○)