「茜色に焼かれる」 石井裕也監督 △ ☆
交通事故で夫(オダギリジョー)を亡くした母親が一人息子を育てるために奮闘する姿を描きました。
アルツハイマーの上級国民に夫を轢き殺された良子(尾野真千子)は相手が一度も謝らなかったことが納得できず、賠償金は1円も受け取らずにダブルワークで中学生の息子純平(和田庵)を育てています。その上介護施設にいる夫の父親の入居費や夫が愛人に産ませた子どもの養育費まで払っています。「まあがんばりましょう。」とがんばって花屋のパートと風俗業でなんとか費用を賄っていましたが、理不尽な出来事が次々と良子を襲います。その上息子は学校でいじめにあっているようなのでした。
良子だけでなく同僚のケイ(片山友希)も子どもの頃から性的虐待を受け紐のような男にまとわりつかれ、男で苦労しています。男といえば夫の友人役の芹澤興人、良子をクビにする花屋の上司役笠原秀幸、純平の担任泉澤祐希、純平に飛び蹴り(お見事な飛び蹴り!)を受ける大塚ヒロタらのダメ男ぶりが見事でした。それに対するオダギリジョーのたった2,3分の登場ながらも映画全体の底辺を支える存在感と風俗店の店長永瀬正敏の情の深いヤクザのふたりが光りました。
もちろん尾野真千子と片山友希、和田庵は賞レースに名乗りを上げる好演でした。(☆)
なお、タイトルは万葉集の中の母を想う歌のことばからだそうです。ところで、二人が暮らす部屋に並んでいたたくさんの蔵書は石井監督の蔵書だとしたらすごいな。
タバコは、禁煙の看板前で男が喫煙し、そのすきに良子が自転車をちょっと借りるという場面がありました。ネタバレになりますがいじめている中学生がなぜかライターを持っていました。(△)
風俗の店長永瀬が喫煙せず、コロコロマッサージや果物を食べて間をもたせる演出が良くできました。