「ブータン 山の教室」 パオ チョニン ドルジ監督 ○ ☆☆
「世界一幸福な国」と言われ国民もそれを知っているブータンの最も僻地にある村の学校を舞台に教育とは?幸福とは?を問いかける作品です。
ミュージシャンとしてオーストラリアへ移住することに憧れているやる気のない青年教師のウゲン(シェラップ ドル)は上司から世界一僻地のルナナ村(標高4800M)の学校へ冬が来るまで赴任することを命じられます。ティンプーからバスでガサまで行きその後はヒマラヤを見ながらのほぼ1週間のトレッキングでたどり着くルナナには車はもちろん電気もありません。しかし、村までまだ2時間も歩くというところまで村人が全員でウゲンを迎えに来ていました。なんとか到着したもののあまりの「なにもなさ」にウゲンは「僕、帰ります。」と投げ出します。しかし、翌朝寝ているウゲンを「先生もう9時です。」とクラス委員のペムザムに起こされしかたなく教室へ行き子どもたちと向き合います。ノートに使う紙も貴重なため足りずそれどころか黒板もありません。ただ、子どもたちの学びたいという向学心や大人が子どもに学ばせたいという強い思いがありました。ウゲンは次第にその思いに応えようとするのでした。
原題は「ルナナ、ヤクがいる教室」で、その名の通りヤクはミルクや肉を利用するためだけでなく糞は燃料として使うためルナナの生活では重要な役割を担っています。ヤクのノルブ(宝の意 実名はナカ)が教室で草を食んでいます。テーマ曲は「ヤクに捧げる歌」(ブータンの伝統歌)でこの曲を通じてウゲルは歌い手の女性セジュ(ケルドン ハモ グルン)と親しくなります。
子どもたちはじめ村人は俳優ではなくルナナに住む村人なのでドキュメンタリーのようでもあります。車もなく紙も使わない生活なのに、雪が減っているという気候温暖化の影響を最も身近に受けている「幸福な国」の人々を通してもう一度自らの生き方を振り返らずにはいられなくなる作品です。(☆)
また、監督が写真家のためか映像が大変美しくそれも見どころです。(☆)
ところで、この作品は隣町にあるミニシアターで見ましたがコロナで座席が半数とはいえ、平日にもかかわらず満席でした。嬉しいことです。
タバコは、なし。無煙です。国民総幸福(GNH)で有名ですが、実はブータンは日本ではあまり取り上げられませんが、禁煙(喫煙は違法)の国でもあります。