ある晴れた日に第206回
霊園でカラスが鳴いたとき、小太郎祖父の声が聴こえた。
「フム、やっぱりたいしたもんにはならんかったのお。言うたとおりじゃ」
父精三郎の声も聴こえた。
「みんな元気にやっとるかのお。健ちゃんも頑張っとるかいな?」
母愛子の声も聴こえた。
「元気しとってか? 耕ちゃんは元気?」
大澤茂おじがにこやかに笑いながらバリトンで問いかけた。
「けっきょく英文学はやらなかったんだね」
根岸の伯母さんからも一言あった。
「あんたやっぱり死んだらゼロだと考えているの?」
私が霊園の曇天の空を見上げると、祖父と父母とおじと伯母の顔があった。
私に向かって、みんなみんな優しく微笑んでいた。
