闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.627&ある晴れた日に第208回

鉄橋の上を驀進する機関車は、君を轢き殺そうとしている。
獰猛なドーベルマンは、君のふぐりを噛み切ろうとしている。
ちんけなちんぴらは、ジャックナイフを振りかざして君に迫ってくる。
世界は、無数の殺意で満ちている。
君の兄さんは、突如としてこの世を身罷った。
君は、君の父親の愛を感じることができない。
森の中の池のほとりで、少年はひとりぼっちで死んでいる。
世界は、無数の死で満ちている。
けれども、森の中には一頭のヘラ鹿が遊んでいる。
そして君の傍には、たった一人の友がいる。
すべての人々を敵に回しても、君の傍らに立ち続けるであろう一人の友人が。
世界は無数の殺意と死と一滴の愛で作られているのだ。
なにゆえに軍艦の色は灰色か人を殺すは憂鬱なるゆえ 蝶人