
音楽千夜一夜第325回
1842年に設立されたウィーンフィルが演奏する交響曲を50枚のCDに収めたすこぶる聴きごたえのある選集です。
指揮者はバーンスタイン、ベーム、クライバー、カラヤン、アバド、ジュリーニなどですが、ここではジェームズ・レヴァインが振ったモザールの交響曲全集11枚に注目したいと思います。
レヴァインはメットでオペラを振ってきましたが、ウィーンフィルと組んでベームやムーティよりも優雅で美しく、抒情的で清新溌剌爽快なモザール演奏を生み出しています。
セルの弟子である名指揮者との蜜月は1990年くらいまでは続いていたのですが、どうしたわけか彼らが来日してブルックナーの5番だか8番だかをじつに無内容に演奏した辺りから急激に悪化して、ついにレヴァインはこの名代のオケからボイコットされ、団長から「もう二度と招かない」と宣告されて現在に至っているのです。
ここではしなくも思い出すのはメットでの練習に遅刻したり出てこなくなったソプラノ歌手のキャスリーン・バトルのことで、彼女を首にしたレヴァインが今度はウィーンフィルから斬られるとは皮肉なものですね。
最近は怪我や病気でぼろぼろがたがたになっているでぶでぶレヴァインですが、ここはなんとか踏みとどまってぜひともリヴェンジして貰いたいものです。
なにゆえに旗日に旗を出さぬかとそのうち誰かが言ってくるだろう 蝶人
なにゆえに朝日歌壇に入選したかなにゆえの歌が百首になった御褒美 蝶人