
蝶人物見遊山記第199回&鎌倉ちょっと不思議な物語第364回
鎌倉若宮大路の段葛は長らく工事中でしたが、本日から開通したので中村吉右衛門丈とその一族を迎え、そのお披露目がありました。彼は昔8代目、9代目幸四郎の父兄共々岐れ道の近所に住んでいたからその縁で呼ばれたのではないでしょうか。
開始時間前から八幡宮前は対大変な人出で大賑わいでしたが、海外からの観光客の多いことには改めて一驚。中にはそれぞれ二人の赤ちゃんを連れた三組のアメリカ人夫婦や屋台のおでんを立ち食いしながら行列が来るのを待ち構えている行儀の悪い中国人、イスラム教国からやってきた若い夫婦などもいて、国際色の豊かなこと。
こういう観光客は円安ドル高になればどっと来て、その反対になれば減るに決まっているのですから、眼の色を変えて誘致したり、観光業者や商店街の言うなりになって多額の税金を使って優遇する必要は濠もありません。市や県や国は、そんなテンポラリーピープルよりも、地元の我ら市民のために、もっともっと地道に奉仕するべきではないかと彼らを見ながら考えていました。
さて肝心の段葛です。参道に沿って植えられていた桜が老齢化したので撤去して若木に取り替え、ついでに参道とその両側の置き石を整備するという話でしたが、どの桜も小さな花を咲かせているとはいえ、新たに規則的に配置された白っぽい灯篭と置き石のちゃちいこと。歴史を感じさせるかつての重厚なそれはいったいどこへ行ってしまったのでしょう。
数億円の経費をかけたというのに、これではなんだかミニチュアの作りもの。そのうえ参道は以前は黒土だったのにやすっぽい舗装道路に変ってしまい、かつての面影はどこにもありません。
私はこんな改悪の改修工事なら、やらないほうがよっぽど良かったと思いながら、地元の名士連が続々と後に続く行列を眺めておりました。
日に三度飯にありつき風呂を浴びるげにありがたき暮らしなるかな 蝶人