闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.989
勝ち誇る極悪に対して忍耐の限りを尽くした正義の味方が最後に実力行使するてふ生理的快感、暴に対して暴で酬いる快感が健さんをヒーローに祭り上げた侠客映画の定石だが、映画から限りなく遠ざかって考えてみると、こういう対抗暴力の無限連鎖からはいかなる平和ももたらされないことはラストに漂う虚無と無常観からも自明であるだろうに、映画も現実もその不毛の円弧を閉じようとはしないし、南田洋子扮する木場芸者との落とし前をつけないで殴りこんだ健さんは脚本の手ぬかりとはいえ再び網走番外地に収監されても終生悔みに悔むだろうな。
わが家でも猫を一匹飼っているすぐネコになる私の背中 蝶人