照る日曇る日第853回&音楽千夜一夜第358回
シャルル・ミュンシュは大好きな指揮者だ。長くボストン交響楽団のシュフを務め、彼の生地ゆかりの独仏両国の音楽にいずれも堪能で、明晰かつ情熱的な演奏を後世に遺してくれた。
彼がフランス国立放送響と録れたドビュッシーやベルリオーズ、Memories盤で聴くボストン響とのベートーヴェンの交響曲全集やモザール、ブルックナーの交響曲などのライヴ演奏はいずれも素晴らしい。それは(バーンスタインもそうだが)、生命の跳躍と輝きがあるからだ。
そんなクラシック音楽の有名指揮者の自伝と思って手に取ったら、ちょっと違っていた。でもなかなか面白い音楽本だった。
これは昔フランスで刊行された「私は○○○という仕事をしている」叢書のひとつで、たまたまミュンシュが「私はオーケストラの指揮者」編を引き受けて書いた本なので、指揮者になりたい青少年が読むと非常に参考になるのではないだろうか。
彼はたとえばこんなことをいう。
「オーケストラは一個大隊である。これを指揮したいと思う前に、その心理を深く理解していなければならない。」
「リヒアルト・シュトラウスの父親は有名なホルン奏者だったが、「我われはあなたが指揮台に上がり、指揮棒を手に取るより前に、主人はあなたなのか我われなのか、もう知っています」と語っていた。」
なるほど。オーケストラにとって指揮者が怖い存在である以上に、指揮者にとってオケは怖い存在なのだ。
「オーケストラの指揮にはスポーツ的な面があるので、私は体操することが必要だと思う。指揮者は、この本来霊感を吹きこまれた存在であり、詩人である者は、想像以上に神経と筋肉との釣り合いを必要とするのである。」
うむ、指揮者は肉体を鍛えなければやっていけないというのはあまり他のマエストロから聞いたこのとない言葉だな。
それから、こういう貴重な歴史的証言もあり、付録の訳者の解説?は要らないと思うけれど、まさに「面白くて為になる」講談社的読物でした。(版元は春秋社だけど)
「生涯の終わりごろ、ブラームスが目も眩むほどの速さでヴァイオリン協奏曲を振りはじめた。そこでクライスラーが中途でやめて抗議すると、ブラームスは「仕方がないじゃないか、きみ今日は私の脈拍が昔より速く打っているのだ。!」と言った。
ラジカセがいきなり初期不良品とは東芝は駄目な会社中国に買収されたらもっと酷くなるだろう 蝶人