あまでうす日記

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ドナルド・キーン著「ドナルド・キーン著作集第14巻「明治天皇下」を読んで

2017-01-04 09:25:40 | Weblog


照る日曇る日 第920回


最終巻では明治27年の「閔妃暗殺」から45年の「大喪、乃木殉死」までを編年体の明治天皇史でありながらむしろ時代時期毎の重要なトピックスを平静かつ明快に論じていく。

西洋列強が新たな植民地獲得を目指してアジアを武力むき出しで侵略してくるなかで、はじめは処女の如く無防備であったこの国が、おわりには脱兎のごとく「力には力、暴には暴」で報いるミニ欧米型の侵略国家の姿形を急速に備えてくるさまが、活写されている。

朝鮮を清国から切り離して独立させるというのが日清日露戦争の大義名分であったが、勝利者の日本は、独立させるどころかその支配者を暗殺したり、政治経済社会権力をみな奪い、しまいには固有の言語も氏姓も奪って完全な隷属下におき、ついには明治43年に併合してしまう。そしてそれ以来、心からのゴメンナサイを言うたことは一度もない。

日韓関係の蹉跌の原点はここにあるのであって、慰安婦問題や竹島領有権問題を直接解決しようと思ってもなかなかうまくいかないのも、ここから無理矢理目をそむけて「未来志向」などと空虚なアホダラ教を唱えているからだろう。

しかし日露戦争も、振り返ってみるとさっぱり意味が分からない戦争である。
列強侵略への防波堤であり生命線である属国韓国を、あの凶暴なクマが、いまにも奪い取りにやってくる。奪われたら次はこの小さな列島に押し寄せるから、その前に先制攻撃しよう。という指導層のパニックだけで実際にあの国運を賭けた大戦争をおっぱじめて、幸か不幸か勝利してしまう。恐露病患者が奇跡的に革命前夜で落ち目の露西亜に勝利したのであったが、これがまた次の戦争への道を切り開いてしまうことになるのである。

キーン選手の通史を読んでいると、我らはなにひとつ過去の歴史から学ぶことなく、その癖「何者かに魅入られて」次から次へと他国に向かって戦争を結果的に「仕掛けてきた」ことが分かる。いまもむかしもそんなどうしようもない国に、どうしてこの老いたる異邦人は帰化したのだろうか。いや、帰化ではなくて渡来か。

 7億円が当たった売り場で2匹目を狙うたけれどはずれてしもうた 蝶人


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