あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

林望「謹訳平家物語四」を読んで

2017-01-29 11:31:03 | Weblog


照る日曇る日第930回



河出版日本文学全集の古川日出男による「平家物語」の濃厚放胆訳の離れ業を読んだ後では、こちらの元祖謹訳がいささか謹厳実直な淡白質に感じられてちと残念だが、同じ原作でこれほどまでの温度差濃淡差があるということは、翻訳の恐ろしさと奥深さを同時に物語ているようだ。

それでも平家直系最後の男、六代御前の最期には涙がちょちょ切れる。

16歳の六代は文覚上人のアドバイスに従って出家し、高野山に詣で、父維盛が滝口入道に見守られながら入水した熊野に赴き、山成の島に渡ろうとして果たせず、京の高雄に戻った。

文覚は頼朝が亡くなった直後に謀反を起こそうとしたが露見し、後鳥羽帝の御世に齢80超の高齢で隠岐島に流されたが、鎌倉政権に反旗を翻したその御鳥羽上皇が、同じ隠岐に島流しになって果てるとは、両人とも夢にも思わなかったことだろう。

文覚上人の骨折りの結果、27歳まで生き延びたものの、あわれ六代御前は、肝心のスポンサーの流罪が災いして召し捕られ、鎌倉に護送される途中、田越川付近で斬られ、ついに平家は滅亡してしまった。

六代の墓は、私の妻が毎週月曜日に通っている逗子のスイミングクラブのすぐ裏手にあるが、残念ながらここに詣でる人を見かけたことはない。


  最高月給が1000万円を超えるなんてどう考えても異常な世界だ 蝶人


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