
闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.1125、1126,1127
○山田洋次監督の「男はつらいよ 奮闘編」をみて
本作では寅次郎の母親、ミヤコ蝶々が登場するがもっと注目すべきは榊原るみ扮する今の言葉で言う知的障がい児の存在で、彼女に同情するあまり、寅さんは引き取りに来た先生役の田中邦衛に怒りを覚えるのである。「学校」などをみても分かるようには昔からこういう社会的弱者に対して暖かい視線を注いでいた山田洋次が社会的埒外的存在の寅さんとの接近を描いたことは興味深い。
○森田芳光監督の「わたし出すわ」
61歳で死んだ森田の最後から3つめの作品で函館をそれと知らせずに幻想的に撮っている。主演の小雪はミスキャストだと思うが、株で儲けた金をかつての級友たちにどんどん提供するという不思議な役どころ。不思議な脚本による不思議な味わいの映画ずら。
○佐々部清監督の「半落ち」をみて
主役の寺尾聡をはじめそうそうたる脇役が出演する感動的な刑事物語だが、内臓のドナー提供者とその手術を受けた者とが、それと知って邂逅するというプロットは人為的にすぎるのではないだろうか。
わが妻が丹精込めて育てたるすべての柚子を栗鼠が喰うたり 蝶人