闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.1244
ハンセン病を患って10代から老年にいたるまで施設に閉じ籠められていた老女(樹木希林が好演)の苦しみと一瞬のよろこびに焦点を当てた感動的な映画である。
長年にわたって、そして現在もなお偏見と差別の対象となっているこの病気とその弊害に苦悩する患者を取り上げた監督の勇気には敬意を表する。
しかしながら、ハンセン氏病という伝染病の正体について一度も科学的冷静正確に表現することなく、具体的には世間の偏見を代表する浅田美代子の発言に一度も異を唱えることなく、いわば情に流される形で映画が終わってしまうのは非常に残念である。
映画の前半部の冷静沈着な展開を最後まで貫けばよかったのに、老女への感情移入が激しくなりすぎて、いささかお涙頂戴に傾いたことが演出の失敗ではなかったろうか。
つまらなき映画といえど一つくらいよきところあると淀長語れり 蝶人