音楽千夜一夜第440回
2017年に93歳で没したポーランド生まれの指揮者が彼の手兵だったザールブリュケン放送交響楽団(現ドイツ放送フィル)を振った全28枚組のCDを楽しく聴き終わりました。
ここに収められたのは彼が得意にしていたブルックナーをはじめ、ベートーヴェン、ブラームス、シューマンの交響曲全曲の他に、バルトーク、ベルリオーズの作品などですが、どれを聴いても作曲家の音符が忠実に鳴り渡っているという「真っ当な」感じがして、音楽以外の夾雑物の介在を感じさせない。
こういうのを、妙な違和感がまったくしない純音楽的表現、と言うのかもしれませんが、かと言うて水の様に淡白なのかと聞かれたら、味もそっけもあるのだから、複雑です。
死ぬ間際には頻繁に来日して読響などに客演して喝采を浴びていましたが、彼がミネソタ響のシェフの時代からのファンだった私としては、なにを今更という感じでありやした。
録音、演奏も優れたこのアルバムですが、一番面白かったのはブルやベトよりも彼の自作自演をスクープした1枚で、「ミュージック・アト・ナナイト」、「ファンタジー夜の横笛」「シンフォニー、ケン・デイトンの思い出」の3曲をぜひ一度耳にして頂きたいと存じます。
今すぐに死すべき奴らが生き残り死んではならない人が死ぬ冬 蝶人