照る日曇る日 第1325回
今回の主題は大日照り。京を襲った天災をおどろおどろしく描く。
結局は安倍晴明が若狭を経由して天の河まで飛んで行ってしまい、見事に豪雨を降らせるのだが、彼女による「付記」を読むと、本編よりももっと面白い。
なんで下級官吏の晴明が藤原兼家やその妾である時姫も住んでいた内裏の鬼門である土御門町口に広大な邸宅を構えることができたかといえば、「晴明と兼家の子、道長は母方の時姫をとおして血縁であった」からではないか」というのである。
なるほどもしそうなら兼家=道長=晴明の強固な三位一体関係もさもありなんと頷ける。これでは正妻の道綱の母が息子共々権勢の陰にうち捨てられたのも無理は無い。
作者はさらに晴明の母について信太の森の女狐にまで捜索の手を伸ばし、興味深い想像の翼を羽ばたかせるのだが、これほど旺盛な好奇心と豊かな学識あればこそ、この作品が見事な輝きを放っているのだと改めて思い知らされた。
ピアニストとしては一流だけど指揮者としては二流半のアシュケナージ 蝶人