照る日曇る日第1477回
普段は文芸書ばかり読んでいるので、理数系の科学書なんて久しぶりです。でも1999年に亡くなったカール・セーガンの妻君による「コスモス」の続編・最新版だというので手に取ってみました。
宇宙の中で銀河が生まれ、銀河の中で恒星が生まれ、恒星の周りで惑星や衛星が生まれる。宇宙に中にはおそらく1兆個、矮小なものの含めると2兆個の銀河があり、その一つが天の川銀河であり、天の川銀河の中には太陽を含めた数億個の星がひしめき合っている。
というのは、良い子の皆さんが誰でも知っている、壮大な宇宙のおはなし、でありますが、
この本、数字とか数式がどっさり出てくるのかと怯えていたら、その反対で、美しい自然や宇宙の写真がいっぱい出てくる。なんでもナショジオとタアイアップした国際出版らしいのでえらい助かりました。
冒頭に138億年の宇宙の歴史を地球の1年に置き換えた「宇宙カレンダー」が出てきてこう教えてくれます。
元旦がビッグバンで、最初の生命の誕生が9月15日、最初の哺乳類誕生は12月26日、ヒトの祖先の誕生は12月31日の午後7時ごろ。大晦日(今からおよそ10万年前)の午後11時56分には合計1万人ほどの世界中のホモ・サピエンスは全員アフリカで暮らしていた。それから間もなく完新生が終わって人類は人新生に突入していったわけですな。
そして著者はこう付け加える。「そのころ神はどこにいたのか?どこにでもいた。石や川、木、鳥など、生命あるものすべてに神は宿っていた。20万年ものあいだ、それが人間の本質だった」。
この一言がいたく気にいったおらっちは、そのあとの400頁を息も継がずにクイクイと読んでしまったのずら。
しかしラマルク流「獲得形態は遺伝する」のルイセンコが、才能あるバビロフを潰した超似非悪玉、切断された木の株が生きていて、ミツバチの集団さながら他の樹木と情報交換しているとは、てんで知らなかったなあ。
ガリレオ、ダーウーン、ニュートン、アインシュタインだけでなく、スピノザ、デカルト、アショーカ王まで登場する、最高に刺激的で、面白くて為になる科学史とは本書のことだろう。
悪政に輪を掛け引き継ぐ代官に千倍返しする時ぞいま 蝶人