音楽千夜一夜第463回
こないだテレビで秋山指揮N響、諏訪内晶子独奏のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴き、その余りにも沈着冷静すぎる静脈系の演奏ぶりに驚いて、こんなんがベトちゃんであるはずがないと思って、60年代からの熱血少女チョン・キョンファのボクッスセットを衝動買いして聞いてみたが、あにはからんや檄伴がテンシュタットなのに、それほどベト熱に燃えたぎったアチチな弾きぶりでもないのにまたしても一驚する始末だった。
半世紀以上も昔に彼女がN響で披露したそれは、文字通り血沸き肉躍る大動脈系の熱演だったが、あれはもうけして再現されない過ぎし青春の微熱のようなものだったのかも知れない。
ま、いいか。
ちなみにこの12枚組の箱にはベトをはじめドヴォルザークやブルッフ、バルトーク、ヴィヴァルディ、チャイコ、ショスタコなどの協奏曲が詰め込まれていて壮観だが、一番聞きごたえがあったのは、チョントリオによるベトトリオの1番、4番、5番、7版、メンデルスゾーンとシューアンのトリオ、それからペーターフランクルと録れたブラームスのソナタだった。
天青が5つの花をつけましたドレミファソと歌うように 蝶人