あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

「夢は第二の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」第95回

2021-01-27 14:38:16 | Weblog

西暦2020年長月蝶人酔生夢死幾百夜


あっちにもこっちにも栗の実が落ちているので、私は夢中で拾いまくった。栗の木の持ち主が誰であるかなどいっさい考えることも無く。すると主の声が私に臨んだ、「勇者も一切れのパンのことで罪を犯すことがある」(箴言28-21)9/1
私はとうとうガランスと一夜を共にしたけれど、その結果妻子とは別れ、ガランスも遠くへ去ってしまい、もはや生き甲斐を失った廃人同様の日々が続いていくのだった。9/2
聖堂のどこかで演奏されているオルランド・ディ・ラッソのモテットを聴いているうちに、これは世界の終わりを受け入れよと訴える音楽だということが分かってきた。9/3
「宮澤賢治が、原稿の中で、黒字に白抜きの文字を書くなんて、絶対ありえないことだ!」と私は、筑摩書房の編集者に怒鳴った。9/4
この図書館では、主として70年代の雑誌や漫画を収集しているのだが、それらはすべて足元の水中に収められているので、僕らはシュノーケル装備で潜らなければならなかったのです。9/5
私は10名を緩やかに、また緊密に数珠繋ぎにして通電し、その電送ロスを調査したが、案に相違して両者の違いはほとんどなかった。9/6
はやりのテレワークに便乗して、在宅デザイナーたちに、新作のデザインをネットで送信してもらったのだが、いくら画面を見つめても、それはいい商品になるのかさっぱり分からない。9/7
光彩陸離たる地中海のさるリゾート地で、世界将棋選手権大会が開催されたのだが、私はそんな素敵なところで座布団に座ってしんねり勝負する気が完全に失せ、試合を放棄して浜辺で午睡を貪っていた。9/8
人類が滅びたのは西暦2022年2月20日。宇宙からやって来た未知の怪獣に追われた人類は、インド象に先導されて、砂漠から森の中まで逃げのびたのだが、そこで出会った光る眼を持った巨大猿に驚いたインド象が、急に引き返したために、後続する避難民と激突して、結局全員死亡したのであった。9/9
敗戦亡国の民草ゆえに、このように哀れにも美しいふぁっちょんが生まれてくるのか、と私は怪しんだ。9/10
中世には、ペストの感染に効果があるとして、流浪の笛吹き男が、魔除けの演奏をしたが、殆どその効果はなかった。9/11
われは、妻子も、家屋敷も、持てるすべてを投げ捨てて、出家したのよ。9/12
世界一の強者を決めるというので、リンクの上に自称世界一の強者が大勢犇めいて、お互いに殺し合っていたが、結局全員死んでしまった。9/12
完熟した果物に取り囲まれた八百屋の奥で、ポルノ映画の鑑賞中に、武装した兵士が飛び込んできて、殺されそうになったので、「話せば分かる」というたが、なかなか話せないので焦る。9/13
岬の根元の社員寮では、4人の男が寝ていた。ナカノ君は、行きつけの食堂で物凄い分量のランチを頼み、ついでに食堂の床に水を流して、「綺麗に洗い流してください」と頼んでいる。9/14
ついこないだまでは愛していたはずなのに、それを意識した彼女が、なぜか否定的に見えてきたので、どんどん腰が引けていく私だった。9/15
特務忍者である私は、新型コロナ被害がまったく報告されていない某国に潜入し、悪性細菌をばらまいて、極悪クラスターを創生することに成功したのさ。9/16
日本学士院の、年に一度の総会の余興で、梅原猛氏と岡井隆氏の即興漫才があって、一同大喜びだった。9/17
私が、手暗がりの左手のケータイに浮かぶ数字を確認しよう、と見つめていると、その奥から。面妖な顔をしたサイトウ某が、大口を開けて迫ってきたので、私はけたくそ悪くなってきた。9/18
私は、やっと社長になったのだが、朝礼とか、入社式で、挨拶をするたびに、頭上の監視カメラに点滅する赤いランプが、気になって、気になって、どうしようもなく嫌になってしまって、即辞めてしまった。9/19
私は、最愛の女性スタッフたちとの「さよならランチ」をすっぽかして、夕方まで広大なキャンパスのあちこちをさ迷っていたが、ようやくオフィスに戻った時に、なぜかA女が私の帰りを待っていたので、彼女の両足をデスクの上に乗せて性交した。9/20
隣に見知らぬリーマンがやって来て、いきなり名刺を取り出し、「えー、こちらが看護師のA子さん、そしてこっちがキャディのB子さん、その他にも美人がいっぱいおりまっせ」というのだった。9/21
私は、いつかゼベダイの子に会いたいな、と思いながら、いつの間にか眠り込んでいった。9/22
なんか急にタクちゃんが変になったので、エイコさんに「これはヤバイ、エスペラント語で話しかけた方がいいと思うから、火星社書店でエスラペラントの文法書を買って来る」というと、エイコさんは「別に日本語で話せばいいんじゃない」というのだった。9/23
愛児を暴行せし男を、私は八つ裂きにして、ぶっ殺してやったずら。9/24
来日した若いアメリカ人夫婦を、上野の丘に案内した私は、「このうつくしい壮麗な景観を眺めているとred,rode,ruseな気持ちになりますな」と言うたが、いつまで待っても返事はなかった。9/24
「第9」の演奏会で、なぜかまだ全部の奏者が席についていないのに演奏が始まってしまったので、ホールにいる全員がうろたえている。9/25
汽車が去り、プラットフォームが尽きると、その先は、木や草がおい茂る野道だったので、私は、どこどこまでも、歩いて行った。9/26
基督の神、アラーの神、古事記の神、神道の神に加えて、信長の神まで次々に枕元に現れて鄭重に挨拶するので、私は恐縮の至りでありました。9/27
どういうわけか、アタシは薬屋の跡取り息子に愛されて、俄かに嫁入りすることになったのよ。9/28
暗闇坂を登っていると、トラックに乗ったサトウ君が誰かに「やるかどうかはケースバイケースだねえ」と話しているので、ああとうとう彼まで日和見するようになったのか、と暗澹たる日本最晩年の夕方だった。9/29
天子様は、将軍と会うたびに、金子や婦女子のお返しがくるので、その都度断るのだが、結局は受け取ってしまのが癖になって、いつも将軍の到来を待ち望むようになってしまった。9/30

 陽性率は感染率とは異なるがまったく無関係な数値でもない 蝶人
コメント
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