あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

細川周平著「近代日本の音楽百年第1巻洋楽の衝撃」を読んで

2021-04-29 11:38:47 | Weblog

照る日曇る日 第1570回

「黒船から終戦まで」という副題がついている全4巻シリーズの皮切りを読んでみました。
序章「トントントンで始まる歴史」は、1853年に初来日したペリー提督の13人編成のブラスバンド&鼓笛隊が「ヤンキー・ドゥードゥル」などを演奏した時の、ある侍の驚きから始まります。
「今日久里浜にて異人上陸するや否や音楽を致し、太鼓を打立、並押之次第中々人間業と見え不申。太鼓の打ちようトントントントントトン大に面白き打様也」という感想文を読むと、初めて西洋音楽を耳にした邦人の感動が、2世紀後の我々にもリアルに伝わってくるような気がします。
以下本書では、その刺激を引き継ぐような形になったこの国の「軍楽隊」、性急な西欧文化受容の象徴「鹿鳴館」、よく邦画にも出てくる「日比谷公園奏楽」「市中音楽隊」「少年音楽隊」「ジンタ」「チンドン屋」、学校教育に取り入れられた「唱歌」、日清戦争下の「軍歌」、「鉄道唱歌」「寮歌」、そして添田唖蟬坊父子が先導した「演歌」まで、その長い歴史と沿革を、膨大な資料と音源、文献を駆使して、まるでそれらの発生現場を見てきたような生々しい筆致で鮮やかに描き出します。
音楽史に興味のある方にも、そうでない読者にもなかなかに興味深い、著者畢生の超大作でありませう。

   我を轢きし運転手の証言が私のそれと全然違う 蝶人
コメント
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