あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

東京都美術館にて「マティス展」をみて

2023-05-30 09:23:08 | Weblog

 

蝶人物見遊山記第366回

 

「20年ぶりの待望の大回顧展」という惹句に誘われて遠路上野までおぼつかない足を伸ばす。足だけではない。実は昨夜は夜中に下痢が酷くなって、だんだん喉から吐きそうになってきたので、何度かぐあんばったのだが、吐ききれず、しばらく便器の傍でのたうち回っていたのだが、6時過ぎてからこれは2度目のコロナ感染ではないか、今日は11時半に岸本鹿歯科の予約があるから、熱があっては大変だと思って、さっきから体温計を出したり入れたりしているところだが、官民共にコロナを無視し始めてからの被害は甚大で、わが近辺でコロナ禍にあえいでいる人は無茶苦茶に多い。遠からず官民は大いなるしっぺ返しに遭うだろうから、いい気味だ。

 

それより「マティス展」の話だった。忘れるところだった。

 

マティスは昔はマチスと表記していて、そっちのほうがPCを打つのが楽だから、以下マチスにするが、今回は出所がポンピドーに偏っているきらいはあるが大小合わせて156点の出品で、かなり見応えがある。

 

コレクションは、はじめは処女の如き点描から後期印象派のセザンヌ、ゴッホ、ルノワール風、野獣主義、表現主義、象徴主義、構成主義と、さながら西洋絵画史のあれこれをつまみ食いするがごとき、激烈な作風の転換を辿るが、最後に突如「切り絵」とそのコラージュ手法に邂逅した瞬間に、マチスは、脱兎のごとく父母未生以前本来のマチスになる。

 

そこでは従来の多種多様なエチュードが、魔法遣いの巨大な釜でぐらぐら煮詰められ、その蒸留の果てに出現して来た、自由で軽快なエーテル、融通無碍な世界放下と、しかる後の世界獲得&再建の美学が、麗しくも花開くのである。

 

なお本展は、来る8月20日まで楽しく開催中。

 

わたくしをなんと言おうか「僕」ではない「俺」か「私」か「おいら」か「わし」か 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする