W・シェイクスピア作・桒山智成訳「冬物語」を読んで
照る日曇る日 第1896回
美しい5月の新緑の中で、沙翁晩年の傑作を最新訳で読む快楽よ!
ボヘミア王に美貌の妻を寝とられたと勘違いしたシチリア王が、次々に巻き起こす悲劇の連鎖は痛ましい。妻と王子を失った王は、アポロンの神託が出てから、ようやく後悔し始まるが、時すでに遅し。
16年後に、妻とボヘミア王との子どもだと思って捨て去った娘が、己の実子と分かり、彼女が、ボヘミア王の息子と結ばれ、死別したはずの妻まで生き還る!という嘘のような奇跡が起こって大団円を迎えるのでR。
解説に拠れば沙翁の原文は全篇ブランク・ヴァースという詩形で書かれており、各行で弱母音と強母音の抑揚が5回繰り返されるリズム(弱強5歩格)を持つというのだが、そんなこたあ知らんかった。
だから沙翁の原文はそれ自身が音楽性に満ち溢れ、それ自体で朗読朗唱に耐えるのだろうが、本訳では日本語とはいえそれに出来るだけ近ずけようと創意工夫しているので好感が持てる。
「この水着どうかしら?」と聞く君に「超可愛いね」と答える仕合せ 蝶人