あまでうす日記

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今西祐一郎編注・源氏物語補作「「山路の露」「雲隠六帖」他2篇」を読んで

2023-05-08 11:01:04 | Weblog

 

照る日曇る日 第1893回

 

岩波文庫の源氏物語はもう出尽くしたと思っていたら、なんとなんとグリコのおまけが6つも転がっていたのでホイホイ読んでみた。

 

まず「宇治十帖」の薫と浮舟のその後を語る「山路の露」だが、浮舟がせっかく九死に一生をえて出家して山里にいたのに、薫と面会もせずにグダグダ終ってしまう結末は、いかがなものであろうか?何のための続編かと腹立たしい。

 

ついで源氏六十巻説に応え、源氏の出家と死を語る「雲隠六帖」だが、源氏出家の解説はともかく、続く冷泉院の出家、浮舟の還俗と出産、匂宮の帝位就任、立后した中君の急死に続く浮舟の再出家と、まるでできそこないのハリウッド映画のような杜撰なプロットが、回転木馬のように急テンポで繰り広げられ、講談か「太平記」を読んでいるような気分になる。

 

面白いのは、江戸時代に入って本居宣長が源氏と六条御息所のなれそめを描いた「手枕」で、アンチ宣長の上田秋成がケチをつけているが、いやさすが宣長、紫式部に成りかわってのゴーストライティングはうまいものである。

 

最後の「別本八重葎」は、長い間ほったらかしにされていた末摘花のもとを須磨から戻った源氏が再訪する噺だが、お馴染みのラブストーリーではなく奇妙奇天烈な妖怪譚に変化していて「源氏愛」の読者の意表をつく。

 

とまれかくまれ、本邦、いな世界最大にして最高の大河小説の衣鉢を継ぎたい、という気持ちだけは良く分かるのである。

 

今日という日の記憶を消すまいと新聞記者は必死に記事書く 蝶人

 

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