西暦2022年長月蝶人酔生夢死幾百夜
ヨシダさんは、下から順番に各製品の製造の仕方とその要点を誰にもわかるように、ゆっくり説明していったので、我われ新人は、心から納得しながら、膨大なメモをこさえることができたのよ。9/1
僕のいろんな内臓の部位は、順番に切り取られ、熱冷ましをしてから、次々に食べられていった。9/2
リュドミラ夫人は。植民地の経営には無関心で、現地の子供たちと遊んでいるのが大好きでした。ブラジルでも、コンゴでも、中南米でも。9/3
戦闘で斃れたばかりの若い兵士の目玉をつつく飢えたカラス共を、わしらは、シッ、シッと言いながら追い払ったが、彼奴等は、すぐに舞い戻ってくるのだった。9/3
モリ・シンイチ選手が宇宙旅行に出かけたのだが、搭乗に一番大事な「電子合言葉」を失念したらしく、公衆電話で問い合わせて来たので、MORI SHINITIだよと教えてやった。9/4
「それはオカシイ」と、最初に言い出した人が、いつのかにか沈黙するようになり、その代わりに、その他大勢の有象無象が、大声で追従しているのだった。9/5
せんだっての台風で、最大の被害を蒙った出入り口を、修復しなければならなくなったので、おらっちは、そこを「高倉門」と名付け、亡くなった社員の名を刻んだ。9/6
「77年間お待たせしました!」と、おらっちが叫んだが、誰一人として、振り向く人はいなかった。9/7
記念式典がまもなく始まるのだが、おらっちは、新旧2つのカルテットのために、演奏曲の調整と痛み分けをしないわけにはいかなかった。9/8
ウクライナ軍は南部で決戦に出たが、ロシア軍の反撃に遭って、欧米から提供された最新兵器を使い果たし、たくさんの死傷者を出したので、当分の間は戦闘中止の已む無きに到ったようだ。9/9
その旅館では、家族旅行にやって来た夫婦を別々に寝かせておいてから、別の夫婦と一緒に寝かせ、朝になると、また元の夫婦を一緒に寝かせるというサービスを自慢にしていた。9/10
おらっちは、去年ロシアがパリコレに出した、「007型のサーカス・ジャンプスーツ」を、巴里の超分解センターで、テッテ的に調査したところ、無数の戦争ポイントが内蔵されていることが、分かったのであった。9/11
そこには8本のスピーカーが並んでいたが、そのうちのどれが鳴っているのか、に、すべての注意を奪われていたので、コンサートの感想など、なにも無かった。9/12
ユニークなその課長は、「今日はお前たちを鍛え上げるぞ」と宣言して、課員の全員を引き連れて飛鳥山公園に花見に出かけ、呑めや歌えやの大宴会を、繰り広げたのであったあ。9/13
カーツ大佐は、食堂で受け取った機密メモを、時折眺めながら、お昼のカツランチに、舌鼓を打っていた。9/14
「戦争か、反戦か」を決める野球大会が開催された。反戦チームは、9回2死満塁の絶好のチャンスに登場したリリーフエースが、4番を空振りの三振に仕留めたのだが、その裏にサヨナラ負けを喫したので、翌日第3次大戦がはじまった。9/15
水中に浮かんでいる詩は、素早く救い上げないと、あっという間に波間に沈んでしまう。9/16
仏におうては、仏を殺し、人におうては、人を殺してきたその男は、もはやその生き方を変えようとしても、てんで変えられなかったずら。9/17
運動のために、断崖絶壁のように聳え立つゼンダ城の外壁にぶら下がっていたら、キタジマ君が、縁を掴んだおらっちの両手を振りほどこうとするので、「冗談はよせやい」というたが、聞こえぬ振りをしてなおも続けるので、だんだん怖くなってきた。9/18
海の向こうからやって来る、新種を含んだ魚類の数々は、細大漏らさず魚類大臣であるおらっちに報告することが、義務づけられていた。9/19
キャンパスのはずれの田舎に「古文研」という名札をつけた古い小屋が建っていて、中には一人の青年が、その名の通り古い書物に囲まれて座って居たので、ああ自分も本当はこんな仕事がしてみたかったんだ、と、激しい嫉妬と羨望に駆られたのよ。9/20
川沿いの両岸の2つの街だけをしらった所いづれも別べんひせかいになってウンチへうたいったんで、きっと内陸部もやられているだろう。9/21
私なんか、なーんもしてないのに、モノスゴイ勢いで、町全体が流され、生きている人も、死人も、もろともに、流されていくのだ。9/21
ここ安アパートの3階でも、戦争がおっぱじまり、血を血で洗う熾烈な戦いから帰還した連中を、4階の天井桟敷の人々は、扇子を開いて「あっぱれ、あっぱれ」と褒めたたえた。9/22
「ブンガクオーという馬は絶対にいけます!」と、その道では権威者のウミウシ氏がのたもうたので、有り金全部を単賞レースに投じたら、3000万円ほどの儲けがあったので、おらっちはそれで「文学王」という名の古本屋兼出版社を、設立することができたのよ。9/22
いきなり敵兵に頭からザックリやられたおらっちを、当の敵兵も、味方の兵士たちも思わず息を呑んで見つめているので、おらっちはもしかするとここで息絶えてしまうのではないかと次第に薄れていく意識の奥で思った。9/23
車が突如停まってしまったので、よく調べてみると、誰かが、ガソリンタンクに、石や砂を入れたらしい。この村は危険だ。9/24
LAのベニスの海岸で寛いでいたら、どこかで見たような顔をした、年齢不詳の女性が隣に座っているので、こんにちは、から始まっていろいろ話をしたのだが、いくら喋っても接点がないので、たぶん赤の他人なのだろうが、えらく気になる人物だ。9/25
おらっちとコウ君は、2人揃って道頓堀のグリコのようにゴールインする計画だったのだが、途中で思い直して、それぞれが全力疾走することにしました。結果は、親子同時のワンワンフィニッシュ。応援に来てくれたシロウヤスさんも、大喜びでした。9/26
「兵士なんか復員してから3年経ったらデクノボウに戻ってしまうのよ」と、その軍人が力説するので、なるほど、それならプーチンが何百万人を総動員しても、所詮は烏合の衆なんだな、と一安心していた。9/27
「この人の、昔と今の作品うおー、年代順に並べて、比較検討してみませう。さすればあ、この人があ、進化するより、むしろ退化し続けてきたことがあ、直ちに明らかになるでしょうよ」と、誰かが、おらっちのことを陰口していた。9/28
英国を代表するシェークスピア学者が来日したのでインタビューをしたんだが、この男は「シェークスピアのどんな作品も詰まらない」と断言するので、驚いてしまった。「詰まらない作品ならなんで研究するんだ」と聞いたら、「他の作家の作品もみな詰まらないのだが食うためにシェ氏を選んだんだ」と答えた。9/28
仰向けのままで、瞑った目をパッと開くと、小さなダイアモンドが、顔の上にポロッと転がり出る。また瞑った目をパッと開くと、小さなダイアモンドが、顔の上にポロッと転がり出る。瞑った目をパッと開くと、小さなダイアモンドが、顔の上にポロッと転がり出る……。9/29
冒頭で、世界のミフネとドロンが、クラウディア・カルディナーレに襲いかかって、いきなりの片肌をひんむいたので、これはどういう映画なのか、と、おらっちは急いで、その深からぬ記憶を急いで辿ったのだが、さっぱり分からんかった9/30
米帝にコテンパンにやられてからこの国人の猫背直らず 蝶人