照る日曇る日 第1863回
『ヤマザキ、天皇を撃て!』を読んで驚き、あの衝撃的な映画「ゆきゆきて神軍」をみてもっと驚いたのは今を去る35年前の1987年でした。
右手の小指がない奥崎謙三の幽鬼のような顔付きだけは記憶に鮮明ですが、肝心の映画の中身などすっかり忘却の彼方に消えていたので、そのシナリオが付録についたこの映画製作ノートを興味深く読みました。
通読してやはり凄いと思ったのは、不動産業者を殺し、昭和天皇にパチンコを放ち、皇族のポルノビラをばらまき、何度も牢屋に入りながら懲りずに出てきて、またまた事件に首を突っ込む稀代のアナキスト&殺人犯の筋金入りの反戦後民主主義原理主義であります。
人間性を破壊する軍隊とその頂点に君臨する天皇にたいする責任の追及を、いいともたやすく放棄した大多数のニッポン人と違って、奥崎謙三選手は、一個人の肉体を引っ提げて反軍隊、反天皇、反権力の一本道を爆走します。
その狂気の濃さ、発火する暴力とテロルの執拗さに辟易しながらも、我らが主人公の傍でキャメラを回し続ける原一男の根性も凄い。もはや映画もドキュメントも明後日に擲って、奥崎「先生」の行状のすべて(恐らく新たな殺人事件の現場であろうとも)、を記録しようとするのです。
原のキャメラが回される中で、奥崎が(惜しみなくゲバルトを用いて)、「お前は戦場で何をやったのか?」と問い詰めると、その相手は、次々に真実を告白する。その姿は、カトリックの「告解」に似ている、と井出孫六氏は解説しているのですが、なるほどと頷けます。
ハクビシン、タイワンリスは処分するがタヌキは助ける市役所職員 蝶人