山形県米沢市で6月29日から行われた第64期本因坊決定戦七番勝負の第5局は挑戦者の高尾紳路九段が羽根直樹本因坊に黒番中押し勝ちし、対戦成績を2勝3敗とした。第6局は7月15、16の両日、千葉県銚子市のぎょうけい館で行われる。
復位を目指す高尾が羽根の勝負手をかわし、カド番をしのいだ。
<高尾九段の話>
2日目に(右辺を黒地にして)盛り返したかと。でも、よくわかりませんでした。最後はコウになれば行けると思っていました。一生懸命打てた碁です。
<羽根本因坊の話>
下辺から右辺の戦いはフリカワリとは言えず、全然ダメ。最後は勝負形にしたかと思いましたが、そうではなかったですね。全体的にミスが多い碁でした。
(毎日新聞より抜粋)
◇ ◇ ◇
週刊碁の1面見出しは「高尾反攻」、「カド番シノぎ羽根に一撃」。
2面では「高尾、苦境から逆襲!」、「羽根、不本意な内容」。
「ウロ烏鷺戯評」では「秀紳復活に執心」
カド番の高尾挑戦者、じっくりと腰を落として一歩づつ優勢を築き上げた一局のようでした。
敗れた羽根本因坊、地合いで先行され挽回策を焦った感じがしました。
本局序盤では高尾九段の実利、羽根本因坊の厚味と二人の持ち味とは逆の展開でした。
自分の持ち味をいかに発揮できるかが、勝敗に影響するのでしょうね。
◇ ◇ ◇
今回、対局地は山形県米沢市の中屋別館不動閣。
不動閣は昭和36年(1961年)第16期の第5局で、坂田栄男(栄寿)九段が9期防衛中の高川秀格本因坊を破り、坂田本因坊時代の始まりを告げた一戦が行われた地だそうです。
もう半世紀も前ということになりますが、対局風景もずいぶん変わったことでしょうね。それでも碁盤(裏面に高川、坂田の署名がある)・碁石は当時と同じものを使っているとのことです。
米沢市ではNHK大河ドラマ「天地人」にあやかって「愛と義のまち・天地人博2009」というイベントを開催しているとのこと。
大河ドラマ、先週放送の段階で主人公・直江兼続は、まだ春日山(上越市)に居を構えています。
この後、上杉家は豊臣秀吉の天下統一を支え会津120万石の有力大名となりますが、「関が原の戦い」で敗れた西軍と結んでいたため、米沢30万石へ減封されます。
直江兼続にとって米沢は上杉家、家臣団を維持していくための町づくりや経済政策の再スタートになった地のようです。
拡大路線から縮小基調への転換。政治や経済、囲碁もそうですが「潮目」を見抜く眼力が大切ですね。