中学受験生活を通し、私は偏差値という数値によって人のことを格付けすることが当たり前となった。
考えてみると、何もよりどころのない小学生だの中学生が、自分という存在を確かめるには偏差値は最も確かだったし、少なくともある特定の努力に対して応えてくれるものだった。
だけど、偏差値偏重がなぜ悪いのかその時の私にはわからなかった。
とにかく、私は中高一貫進学校に入学した。
受験を経て同じような力の人間が集まってのんびりできると思ったら、全く違い、優秀な奴はいくらでもいて、私は凡人としてひたすら埋没した。もともと、たいしたことない成績(偏差値)で滑り込んだ中学生活は地獄となった。もともと苦手な数学はすぐに落ちこぼれ、英語にしても中学が決まってすぐに塾に通いはじめていた同級生たちからあっという間に置き去りにされた。所詮のんきな私の親達が、学校に全部任せておいてくださいという言葉を真に受けてくれたのは、ある意味助かりはした。
気がついたら成績下位グループいるのが当たり前となった。学力テストで隣の席の友人が成績上位者として張り出されるのをみながら、私はまるで血の池地獄でぷかぷかぷかしているようにもがいていた。
ずっと下位を低迷していたからといっても、男子校だったせいか中学受験塾のようにバカにされるようなことは無かった。体格もよく、もともと明るい性格で劣等感をもつことはなかった。 外に出て、学校の名前を出せば一目置いてもらえた。だが、より偏差値の高い学校に対しての劣等感はいつもあった。
何も考えず、毎日を部活で紛らわし、友人と遊び暮らした。あとは、読書。旧制中学に入ってから落ちこぼれた少年が主人公の井上靖だの、青春に苦しむヘッセなどがおきにいりだった。 当然のことながら、残念ながらガールフレンドができることはなかった。
いじめをみたり聞いたりしたが、傍観していた。
そして、相変わらずの低空飛行のまま、私は、中学三年になった。
心の底に降りていく