在イスラエル米国大使館の移転 どんな問題?何が問題?
米国のトランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認めて、米大使館をテルアビブからエルサレムに移すと語ってきました。当事者であるパレスチナは反発を強め、世界でも懸念が広がっています。どんな問題なのでしょうか。(カイロ=小玉純一)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/44/bc7553988959aaf6d35a28a707df6545.jpg)
Q エルサレムは、どの国に属するの?
A イスラエルは「エルサレムが首都だ」います。各国は通常、相手国の首都に大使館を置きます。しかし、いまエルサレムに大使館を置く国はありません。エルサレムの帰属が国際社会では決まっていないからです。
いまのイスラエル、ヨルダン川西岸(パレスチナ自治区)、ヨルダン一帯は20世紀前半、英国の事実上の植民地でした。
英国が統治したこの地域について、第2次世界大戦後の1947年、国連総会がこう決めました。
「ユダヤ人の国とアラブ人の国に分けて、エルサレムとその周辺を国際管理とする」
Q ユダヤ人の国とアラブ人の国は共存できたの?
A 翌48年、ユダヤ人がイスラエルを建国します。欧州で迫害され移ってきた人々などの悲願でした。建国直後、イスラエルとアラブの国々が戦争し、エルサレムは東西に分かれます。西をイスラエル、東をアラブの国ヨルダンが統治します。
1967年、イスラエルはアラブ諸国との戦争で勝って、エルサレムの東側を占領し「併合」しますが、国連はこれを無効としました。しかし、その後50年間、イスラエルはエルサレム東部を併合したままです。
他方、パレスチナは別の主張です。
パレスチナ人は、いまのイスラエルやヨルダン川西岸あたりに何世紀も暮らしてきたアラビア語を母語とする人たちです。イスラエルの建国で、70万人が故郷を追われました。パレスチナ人は自分たちの国をつくる運動を続けています。いまでは1967年の戦争前の境界を国境としてイスラエルと共存する国を目指しています。東エルサレムを首都にすると主張しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/0a/e346b9db8e559b4910c995a2067930d1.jpg)
イスラム教徒、ユダヤ教徒がいずれも聖地と見なすエルサレムの旧市街=2007年2月撮影(AFP時事)
Q 大使館をエルサレムに移すとどうなるの?
A イスラエルの主張する通り東部を含めたエルサレムをイスラエルの首都と認めることになります。それはイスラエルによる東部「併合」、戦争による領土拡大を認めることです。
東エルサレムの旧市街(城壁で囲んだ一画)や周辺には、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の宗教施設があります。各宗教の信者が、世界に数々ある施設の中でも非常に大切にしている施設です。エルサレムが3宗教の聖地といわれるゆえんです。
イスラエルはその旧市街がある東工ルサレムを併合し、不法な入植を拡大し続けています。そのイスラエルに対し、いまでさえ世界のイスラム教徒が不満を募らせています。そこへ聖地を占領者イスラエルの首都と認めるなら、彼らの猛反発は必至です。
Q 国際的にも影響があるの?
A 米国がイスラエルに約束する安全保障にも支障が生じます。米国のオバマ前政権の国務長官ケリー氏は、大使館を移転すれば「地域全体で爆発が起きる」と言い、イスラエルの隣国ヨルダンやエジプトとの関係も損なうとも指摘しました。
両国はイスラエルと国交のある数少ないアラブ・イスラムの国で、米国が支援している国でもあります。特にヨルダンはパレスチナ系住民が7割です。ヨルダンの閣僚は、大使館移転を「越えてはならない一線」と警告しています。
米議会は1995年に移転を求める法案を可決したものの、クリントン、ブッシュ、オバマの歴代大統領は、大統領権限で移転を見送っています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年2月2日付掲載
世界地図帳を見ても、エルサレムが赤い◎で印されているので、一般的にエルサレムをイスラエルの首都と思っている人がほとんどでしょうが、実際は違うのですね。
ユダヤ人が迫害から逃れてイスラエルを建国したというのは分かるのですが、もともと住んでいたパレスチナ人を追い出しての建国です。
エルサレムは、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の3つの宗教の聖地です。
ユダヤ人もパレスチナ自治区に勝手に入植したりしないで、もっと折り合える関係になれないでしょうか。
ユダヤ、パレスチナの関係を逆撫でるような大使館移転はやめるべきです。
米国のトランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認めて、米大使館をテルアビブからエルサレムに移すと語ってきました。当事者であるパレスチナは反発を強め、世界でも懸念が広がっています。どんな問題なのでしょうか。(カイロ=小玉純一)
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Q エルサレムは、どの国に属するの?
A イスラエルは「エルサレムが首都だ」います。各国は通常、相手国の首都に大使館を置きます。しかし、いまエルサレムに大使館を置く国はありません。エルサレムの帰属が国際社会では決まっていないからです。
いまのイスラエル、ヨルダン川西岸(パレスチナ自治区)、ヨルダン一帯は20世紀前半、英国の事実上の植民地でした。
英国が統治したこの地域について、第2次世界大戦後の1947年、国連総会がこう決めました。
「ユダヤ人の国とアラブ人の国に分けて、エルサレムとその周辺を国際管理とする」
Q ユダヤ人の国とアラブ人の国は共存できたの?
A 翌48年、ユダヤ人がイスラエルを建国します。欧州で迫害され移ってきた人々などの悲願でした。建国直後、イスラエルとアラブの国々が戦争し、エルサレムは東西に分かれます。西をイスラエル、東をアラブの国ヨルダンが統治します。
1967年、イスラエルはアラブ諸国との戦争で勝って、エルサレムの東側を占領し「併合」しますが、国連はこれを無効としました。しかし、その後50年間、イスラエルはエルサレム東部を併合したままです。
他方、パレスチナは別の主張です。
パレスチナ人は、いまのイスラエルやヨルダン川西岸あたりに何世紀も暮らしてきたアラビア語を母語とする人たちです。イスラエルの建国で、70万人が故郷を追われました。パレスチナ人は自分たちの国をつくる運動を続けています。いまでは1967年の戦争前の境界を国境としてイスラエルと共存する国を目指しています。東エルサレムを首都にすると主張しています。
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イスラム教徒、ユダヤ教徒がいずれも聖地と見なすエルサレムの旧市街=2007年2月撮影(AFP時事)
Q 大使館をエルサレムに移すとどうなるの?
A イスラエルの主張する通り東部を含めたエルサレムをイスラエルの首都と認めることになります。それはイスラエルによる東部「併合」、戦争による領土拡大を認めることです。
東エルサレムの旧市街(城壁で囲んだ一画)や周辺には、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の宗教施設があります。各宗教の信者が、世界に数々ある施設の中でも非常に大切にしている施設です。エルサレムが3宗教の聖地といわれるゆえんです。
イスラエルはその旧市街がある東工ルサレムを併合し、不法な入植を拡大し続けています。そのイスラエルに対し、いまでさえ世界のイスラム教徒が不満を募らせています。そこへ聖地を占領者イスラエルの首都と認めるなら、彼らの猛反発は必至です。
Q 国際的にも影響があるの?
A 米国がイスラエルに約束する安全保障にも支障が生じます。米国のオバマ前政権の国務長官ケリー氏は、大使館を移転すれば「地域全体で爆発が起きる」と言い、イスラエルの隣国ヨルダンやエジプトとの関係も損なうとも指摘しました。
両国はイスラエルと国交のある数少ないアラブ・イスラムの国で、米国が支援している国でもあります。特にヨルダンはパレスチナ系住民が7割です。ヨルダンの閣僚は、大使館移転を「越えてはならない一線」と警告しています。
米議会は1995年に移転を求める法案を可決したものの、クリントン、ブッシュ、オバマの歴代大統領は、大統領権限で移転を見送っています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年2月2日付掲載
世界地図帳を見ても、エルサレムが赤い◎で印されているので、一般的にエルサレムをイスラエルの首都と思っている人がほとんどでしょうが、実際は違うのですね。
ユダヤ人が迫害から逃れてイスラエルを建国したというのは分かるのですが、もともと住んでいたパレスチナ人を追い出しての建国です。
エルサレムは、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の3つの宗教の聖地です。
ユダヤ人もパレスチナ自治区に勝手に入植したりしないで、もっと折り合える関係になれないでしょうか。
ユダヤ、パレスチナの関係を逆撫でるような大使館移転はやめるべきです。