国の借金1000兆円どうする 資産額トップ水準 応能負担で解決可能
安倍政権下で、政府が抱えこんだ国債などの債務残高は、2018年6月末、1089兆円に達しました。この巨額の政府債務を前に、「このままやっていけるのか」、「子や孫の代に暗黒の人生を強いるのか」といった不安がよぎります。
でも、ちょっと待ってください。政府債務は世界トップレベルですが、他方で、世界第3位の経済大国日本の大企業・金融機関・富裕層が保有する資産総額も、世界のトップレベルであることに目を向けましょう。政府債務問題は、負担できるところが負担する原則に沿った債務の返済プログラムとシステムを立ち上げ、それを実行するかどうかにかかっています。
というのも、国内で使い切れない、ばく大なジャパンマネーは、海外の株式・債券投資、貸付金となって流れ、18年6月末で1016兆円の海外資産となって積み上がっています。
負債を差し引いた対外純資産残高は世界一の325兆円に達し、2位のドイツ、3位の中国に、ほぼ100兆円の差をつけています。
それだけではありません。国内でも、対外資産と多少重複しますが、企業には内部留保が446兆円も存在します。また富裕層122万世帯の金融資産総額は、アベノミクスの株高などの恩恵を受け272兆円(15年現在、野村総合研究所調べ)に達しています。
あるところにはあり余る資産があります。元はといえば、こうした資産形成も、国債を増発した財源で実現した経済成長の成果を独り占めした結果です。このような資産に目を向け、金持ち減税をやめ、法人税や所得税を減税前の水準に戻して解決を図るべきです。
この点で、なんとしても避けなければならないのは、消費税増税や物価上昇など、国民生活を犠牲にした政府債務の「返済」です。
実は終戦直後の政府債務残高は、現在とほぼ同じ水準(対国内総生産比で2倍)でした。戦時下の軍事国債の日銀引き受けで膨張した政府債務の「返済」は、国民生活を犠牲に断行されました。
当時の政府は、ハイパー(急激な)インフレーションを起こし、円の通貨価値を暴落させ、それによって政府債務を事実上洗い流したからです。
消費者物価は、昭和20年代(1945~54年)に戦前の300倍ほどに暴騰(11円の通貨価値は300分の1に暴落)しましたから、政府債務の実質的な負担は300分の1になりました。
でも、国民は300倍の物価高に襲われ、しかも、金融緊急措置令で預貯金が封鎖され、過酷な財産税ものしかかり、「竹の子生活」(竹の子の皮をはぐように衣料品などを売って生活すること)を強いられました。
1000兆円の借金を抱えた現代日本は、応能負担の原則に沿って政府債務問題を解決するのか、それとも終戦直後のような国民への負担押し付けの歴史を繰り返すのか、その分岐点に立っています。
山田博文(やまだ・ひろふみ 群馬大学名誉教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2018年10月21日付掲載
日本のGDPは2017年は約531兆円、2018年は537兆円になる見込み。
その2倍近い額の債務残高。
しかし、それをペイできる資産は隠れたところにある。
住宅ローンでも20~30年で返していくのだから、大企業や富裕層に負担を求めれば十分返済は可能。
安倍政権下で、政府が抱えこんだ国債などの債務残高は、2018年6月末、1089兆円に達しました。この巨額の政府債務を前に、「このままやっていけるのか」、「子や孫の代に暗黒の人生を強いるのか」といった不安がよぎります。
でも、ちょっと待ってください。政府債務は世界トップレベルですが、他方で、世界第3位の経済大国日本の大企業・金融機関・富裕層が保有する資産総額も、世界のトップレベルであることに目を向けましょう。政府債務問題は、負担できるところが負担する原則に沿った債務の返済プログラムとシステムを立ち上げ、それを実行するかどうかにかかっています。
というのも、国内で使い切れない、ばく大なジャパンマネーは、海外の株式・債券投資、貸付金となって流れ、18年6月末で1016兆円の海外資産となって積み上がっています。
負債を差し引いた対外純資産残高は世界一の325兆円に達し、2位のドイツ、3位の中国に、ほぼ100兆円の差をつけています。
それだけではありません。国内でも、対外資産と多少重複しますが、企業には内部留保が446兆円も存在します。また富裕層122万世帯の金融資産総額は、アベノミクスの株高などの恩恵を受け272兆円(15年現在、野村総合研究所調べ)に達しています。
あるところにはあり余る資産があります。元はといえば、こうした資産形成も、国債を増発した財源で実現した経済成長の成果を独り占めした結果です。このような資産に目を向け、金持ち減税をやめ、法人税や所得税を減税前の水準に戻して解決を図るべきです。
この点で、なんとしても避けなければならないのは、消費税増税や物価上昇など、国民生活を犠牲にした政府債務の「返済」です。
実は終戦直後の政府債務残高は、現在とほぼ同じ水準(対国内総生産比で2倍)でした。戦時下の軍事国債の日銀引き受けで膨張した政府債務の「返済」は、国民生活を犠牲に断行されました。
当時の政府は、ハイパー(急激な)インフレーションを起こし、円の通貨価値を暴落させ、それによって政府債務を事実上洗い流したからです。
消費者物価は、昭和20年代(1945~54年)に戦前の300倍ほどに暴騰(11円の通貨価値は300分の1に暴落)しましたから、政府債務の実質的な負担は300分の1になりました。
でも、国民は300倍の物価高に襲われ、しかも、金融緊急措置令で預貯金が封鎖され、過酷な財産税ものしかかり、「竹の子生活」(竹の子の皮をはぐように衣料品などを売って生活すること)を強いられました。
1000兆円の借金を抱えた現代日本は、応能負担の原則に沿って政府債務問題を解決するのか、それとも終戦直後のような国民への負担押し付けの歴史を繰り返すのか、その分岐点に立っています。
山田博文(やまだ・ひろふみ 群馬大学名誉教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2018年10月21日付掲載
日本のGDPは2017年は約531兆円、2018年は537兆円になる見込み。
その2倍近い額の債務残高。
しかし、それをペイできる資産は隠れたところにある。
住宅ローンでも20~30年で返していくのだから、大企業や富裕層に負担を求めれば十分返済は可能。