狙われる消費税10%④ 中小業者に過酷な負担
消費税は「営業破壊税」です。中小業者に過酷な負担を強いるからです。10%への増税が強行されれば、中小業者の経営がますます悪化し、廃業が増加することは必至です。
全国商工団体連合会(全商連)の「2018年上期(3月)営業動向調査」によると、「消費税が10%になった場合の商売に及ぼす影響」について、流通・商業の45・5%が「売り上げが減る」、宿泊・飲食業の9・4%が「廃業を考えざるを得ない」と回答しています。
価格転嫁困難
中小業者は消費税を価格転嫁することが困難です。消費者が商品・サービスを購入する際、「本体価格十消費税」を払っていることになっています。価格支配力のある大企業の場合、適切な利益をあげられる価格で販売することができます。しかし、中小業者の場合、取引先の求めに応じて値引かざるをえないことがあり、商品価格に消費税を加えられないことが多々あります。そのため、納税のために身銭を切るということが発生します。
全商連の調査では金属製品・機械器具製造業では23・6%、宿泊・飲食業では70・6%もの業者が現行8%の消費税を価格転嫁できないと答えています。同調査では消費税率が10%になった場合、宿泊・飲食業者の88・2%が「転嫁できないと思う」と答えています。中小業者の経営がさらに苦しくなるのは間違いありません。
加えて10%への消費税率引き上げに合わせて、「複数税率」の導入が予定されています。食料品などを8%に据え置くもので、政府は「低所得者への負担軽減」が目的といいます。
しかし、飲食品提供業者にとっては、出前なら8%、店内飲食なら10%など煩雑な手間がかかります。また、食料品とそれ以外を販売する小売店でも商品ごとに税率が異なることになり、やはり煩雑になります。いずれにせよ、混乱と負担の増加は避けられません。
免税業者外し
政府は23年10月から消費税納税計算にインボイス制度を導入するとしています。インボイスは適格請求書ともいわれ、購入商品を8%と10%といった課税種別ごとに記載し、商品価格と消費税額を明記した請求書のことです。消費税課税業者だけが発行できます。
業者が納税する消費税額は販売にかかっている消費税額から仕入れにかかった消費税額を差し引いて算出します。仕入れ税額控除です。現在は請求書保存方式をとっており、帳簿と請求書によって仕入れ税額控除をおこなっています。
インボイス制度が導入されると、課税業者からの購入は仕入れ税額控除できますが、インボイスを発行できない免税業者からの購入は仕入れ税額控除ができなくなってしまいます。課税業者は税負担の増額を嫌い、免税業者との取引を避ける恐れがあります。現在500万あるとされる免税業者は、実務負担も税負担も重い課税業者になるか、取引からの排除を覚悟で免税業者を続けるのかが迫られることになります。
消費税増税には賛成の日本商工会議所は財界団体の一つですが、インボイスの導入には反対しています。
インボイスはフリーランスや請負など「雇用によらない働き方」で就業している人たちにも影響を与えます。フリーランスなどを使っている企業の多くは、報酬を「外注費」扱いとし、消費税が含まれているとみなして仕入れ税額控除をおこなっています。インボイス制度導入後はそれができなくなるため、フリーや請負で働く人たちは、課税業者になり消費税を納税しなければならなくなる恐れがあります。課税業者にならなければ、雇い主は仕入れ税額控除をできなくなるため、働く人たちが報酬の引き下げに直面する恐れがあります。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年10月26日付掲載
中小業者は消費税を転嫁できないだけでなくって、免税業者に至ってはインボイス制度の導入によって税額控除ができず取引から排除される可能性も。
消費税は「営業破壊税」です。中小業者に過酷な負担を強いるからです。10%への増税が強行されれば、中小業者の経営がますます悪化し、廃業が増加することは必至です。
全国商工団体連合会(全商連)の「2018年上期(3月)営業動向調査」によると、「消費税が10%になった場合の商売に及ぼす影響」について、流通・商業の45・5%が「売り上げが減る」、宿泊・飲食業の9・4%が「廃業を考えざるを得ない」と回答しています。
価格転嫁困難
中小業者は消費税を価格転嫁することが困難です。消費者が商品・サービスを購入する際、「本体価格十消費税」を払っていることになっています。価格支配力のある大企業の場合、適切な利益をあげられる価格で販売することができます。しかし、中小業者の場合、取引先の求めに応じて値引かざるをえないことがあり、商品価格に消費税を加えられないことが多々あります。そのため、納税のために身銭を切るということが発生します。
全商連の調査では金属製品・機械器具製造業では23・6%、宿泊・飲食業では70・6%もの業者が現行8%の消費税を価格転嫁できないと答えています。同調査では消費税率が10%になった場合、宿泊・飲食業者の88・2%が「転嫁できないと思う」と答えています。中小業者の経営がさらに苦しくなるのは間違いありません。
加えて10%への消費税率引き上げに合わせて、「複数税率」の導入が予定されています。食料品などを8%に据え置くもので、政府は「低所得者への負担軽減」が目的といいます。
しかし、飲食品提供業者にとっては、出前なら8%、店内飲食なら10%など煩雑な手間がかかります。また、食料品とそれ以外を販売する小売店でも商品ごとに税率が異なることになり、やはり煩雑になります。いずれにせよ、混乱と負担の増加は避けられません。
免税業者外し
政府は23年10月から消費税納税計算にインボイス制度を導入するとしています。インボイスは適格請求書ともいわれ、購入商品を8%と10%といった課税種別ごとに記載し、商品価格と消費税額を明記した請求書のことです。消費税課税業者だけが発行できます。
業者が納税する消費税額は販売にかかっている消費税額から仕入れにかかった消費税額を差し引いて算出します。仕入れ税額控除です。現在は請求書保存方式をとっており、帳簿と請求書によって仕入れ税額控除をおこなっています。
インボイス制度が導入されると、課税業者からの購入は仕入れ税額控除できますが、インボイスを発行できない免税業者からの購入は仕入れ税額控除ができなくなってしまいます。課税業者は税負担の増額を嫌い、免税業者との取引を避ける恐れがあります。現在500万あるとされる免税業者は、実務負担も税負担も重い課税業者になるか、取引からの排除を覚悟で免税業者を続けるのかが迫られることになります。
消費税増税には賛成の日本商工会議所は財界団体の一つですが、インボイスの導入には反対しています。
インボイスはフリーランスや請負など「雇用によらない働き方」で就業している人たちにも影響を与えます。フリーランスなどを使っている企業の多くは、報酬を「外注費」扱いとし、消費税が含まれているとみなして仕入れ税額控除をおこなっています。インボイス制度導入後はそれができなくなるため、フリーや請負で働く人たちは、課税業者になり消費税を納税しなければならなくなる恐れがあります。課税業者にならなければ、雇い主は仕入れ税額控除をできなくなるため、働く人たちが報酬の引き下げに直面する恐れがあります。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年10月26日付掲載
中小業者は消費税を転嫁できないだけでなくって、免税業者に至ってはインボイス制度の導入によって税額控除ができず取引から排除される可能性も。