けいざい四季報⑤ アベノミクス 水増し重ねる「経済成長」
安倍晋三首相は自民党総裁選(9月20日投開票)の中で経済政策「アベノミクス」の妥当性を訴えました。地元・山口県下関市で行った長州「正論」懇話会(8月12日)でも経済政策の成果を自画自賛しました。
【ポイント】
①安倍首相が経済政策アベノミクスの成果を誇るが、名目GDPの伸びは水増し
②就業者数でも増えてきたのは医療・介護・保育。低賃金と過重労働で人手不足
③税収増も消費税増税で水増し。労働者の実質賃金や家計の実質消費支出は下落
計算方法を変更
安倍政権の5年半で名目国内総生産(GDP)が58兆円伸びたと首相は語っています。ところが、この「急成長」は経済の実態を反映していません。2016年12月にGDPの計算方法を変更して設備投資の項目に研究開発費を追加したことなどにより、大きく水増しされた数字です。水増し額は31兆6千億円(15年度)に達します。
首相のもう一つの自慢が就業者数の増加です。
正社員の有効求人倍率は過去最高となり、「1人の『正社員になりたい』という求職者に対して、それ以上の正規の雇用があるという、まっとうな社会を作り上げた」と胸を張っています。
「保育園に入りたい!」と声をあげた保護者ら=2月26日、国会内
製造業は横ばい
しかし、就業者数の増加には景気循環と関係のない社会構造の変化が大きく作用しています。医療・福祉(介護・保育を含む)の就業者数が過去10年間で233万人も増え、就業者数全体の増加(103万人)を上回っています。高齢者と共働き世帯が増えた影響です。
安倍政権が低賃金や過重労働を解消する責任を果たさないため、保育士と介護職員が不足し、多くの児童・高齢者が保育所・施設に入れないままです。これが「まっとうな社会」の実像です。
他方、製造業の就業者数は世界金融危機(08年)と東日本大震災(11年)で落ち込んだ後、回復していません。過去10年間で118万人も減っています。経済産業省も、アベノミクスの期間に「全体の就業者数は増えている」ものの、医療・福祉が多くを占め、「製造業の就業者数は、ほぼ横ばい」(「18年版ものづくり白書」)だと告白しています。
語らない数字に
首相が誇る税収増も水増し数字です。12年度決算と比べ、17年度決算で増えた税収20兆円のうち、半分近い9・7兆円は消費税収の増加分です。国民に増税を押し付けた結果であり、日本経済が豊かになった結果ではありません。また12年度は金融危機と大震災で税収が異常に落ち込んだ特殊な年度でした。
日本経済の実相は、首相が語らない数字に表れています。労働者1人当たりの実質賃金は安倍政権の5年余で年14万3千円も下落しました。2人以上の世帯における家計の実質消費支出は5年余で年10万3千円も下落しました。
首相は国民ではなく投資家の要求に耳を傾けています。「スピード感のある改革が進んだ」と「外国人投資家が語ってくれた」ことを自慢話にしています。公的資金を使って株価をつり上げ、外国人投資家を大もうけさせる、売国的な政策を象徴する言葉です。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年10月6日付掲載
都合のいい数字ばかり並べて、経済が良くなったと言っているが、労働者の生活実態は低迷している。
安倍晋三首相は自民党総裁選(9月20日投開票)の中で経済政策「アベノミクス」の妥当性を訴えました。地元・山口県下関市で行った長州「正論」懇話会(8月12日)でも経済政策の成果を自画自賛しました。
【ポイント】
①安倍首相が経済政策アベノミクスの成果を誇るが、名目GDPの伸びは水増し
②就業者数でも増えてきたのは医療・介護・保育。低賃金と過重労働で人手不足
③税収増も消費税増税で水増し。労働者の実質賃金や家計の実質消費支出は下落
計算方法を変更
安倍政権の5年半で名目国内総生産(GDP)が58兆円伸びたと首相は語っています。ところが、この「急成長」は経済の実態を反映していません。2016年12月にGDPの計算方法を変更して設備投資の項目に研究開発費を追加したことなどにより、大きく水増しされた数字です。水増し額は31兆6千億円(15年度)に達します。
首相のもう一つの自慢が就業者数の増加です。
正社員の有効求人倍率は過去最高となり、「1人の『正社員になりたい』という求職者に対して、それ以上の正規の雇用があるという、まっとうな社会を作り上げた」と胸を張っています。
「保育園に入りたい!」と声をあげた保護者ら=2月26日、国会内
製造業は横ばい
しかし、就業者数の増加には景気循環と関係のない社会構造の変化が大きく作用しています。医療・福祉(介護・保育を含む)の就業者数が過去10年間で233万人も増え、就業者数全体の増加(103万人)を上回っています。高齢者と共働き世帯が増えた影響です。
安倍政権が低賃金や過重労働を解消する責任を果たさないため、保育士と介護職員が不足し、多くの児童・高齢者が保育所・施設に入れないままです。これが「まっとうな社会」の実像です。
他方、製造業の就業者数は世界金融危機(08年)と東日本大震災(11年)で落ち込んだ後、回復していません。過去10年間で118万人も減っています。経済産業省も、アベノミクスの期間に「全体の就業者数は増えている」ものの、医療・福祉が多くを占め、「製造業の就業者数は、ほぼ横ばい」(「18年版ものづくり白書」)だと告白しています。
語らない数字に
首相が誇る税収増も水増し数字です。12年度決算と比べ、17年度決算で増えた税収20兆円のうち、半分近い9・7兆円は消費税収の増加分です。国民に増税を押し付けた結果であり、日本経済が豊かになった結果ではありません。また12年度は金融危機と大震災で税収が異常に落ち込んだ特殊な年度でした。
日本経済の実相は、首相が語らない数字に表れています。労働者1人当たりの実質賃金は安倍政権の5年余で年14万3千円も下落しました。2人以上の世帯における家計の実質消費支出は5年余で年10万3千円も下落しました。
首相は国民ではなく投資家の要求に耳を傾けています。「スピード感のある改革が進んだ」と「外国人投資家が語ってくれた」ことを自慢話にしています。公的資金を使って株価をつり上げ、外国人投資家を大もうけさせる、売国的な政策を象徴する言葉です。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年10月6日付掲載
都合のいい数字ばかり並べて、経済が良くなったと言っているが、労働者の生活実態は低迷している。