けいざい四季報④ 国内景気 国民犠牲に大企業潤う
報告で景気の基調判断を「緩やかに回復している」としました。9カ月連続で同じ表現を用いています。4~6月期のGDP(国内総生産)改定値は、企業の設備投資などがけん引し、年率換算で3・0%増と速報値から上方修正されています。
【ポイント】
①大企業の経常利益は伸びても労働者賃金は横ばい。個人消費は低迷がつづく
②日米会談で貿易協定めざす交渉開始で合意。自動車のために農産物差し出す
③大手交換業者から70億円もの仮想通貨が流出。厳格なルールづくりが急務
消費支出は減少
政府は「回復」という言葉を使用しているものの、国民生活は大変です。個人消費が伸びていません。GDP改定値0・7%増と据え置きです。2人以上の世帯における実質消費支出は、安倍晋三政権発足時の2012年12月から18年7月の間に年換算で22万円も減少しています。年間を通して働いても年収200万円以下の労働者は12年連続で1000万人を超えました。
国民生活の困窮がすすむのは、大企業がもうけを上げる一方で、賃金が上がらないからです。安倍政権の発足後、17年度まで大企業の経常利益は1・6倍に増える一方、労働者の賃金は1・03倍と横ばいでした。その結果、配当金は1・62倍に急増し、内部留保は425兆8000億円と史上最高を更新しました。安倍政権は「世界で一番企業が活躍しやすい国」を掲げています。その実態は、国民生活を犠牲にした大企業の利益拡大にほかなりません。
店頭で品定めをする買い物客=東京都内
国内経済の出来事(7月~9月)
農産物を犠牲に
安倍首相はトランプ米大統領との会談で、日米2か国間の貿易協定に向け、交渉を開始することを合意しました。会談後、発表された共同声明は「日米物品貿易協定(TAG)」、「他の重要分野(サービスを含む)で早期に交渉結果を出し得るもの」について交渉を開始すると明記。その議論の完了後に「他の貿易・投資の事項についても交渉を行う」としました。
安倍首相は、首脳会談において「交渉の継続中にアメリカが検討する自動車などの関税引き上げ措置は発動しないことを確認した」と述べています。
米国は日本に対して、牛肉など農産物市場のより大幅な開放を求めています。日本政府は、農産物の関税引き下げを米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)の水準にとどめたい意向とされます。しかし、TPPそのものが米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の重要5品目を除外するよう求めた国会決議に反して交渉し、史上最悪の農林水産物輸入「自由化」を約束したものです。
結局、日本製自動車・同部品への追加関税を回避するために農産物市場を差し出そうという屈従外交です。
仮想通貨が流出
仮想通貨交換所大手のZaif(ザイフ)から70億円相当の仮想通貨が流出しました。同交換所を運営するテックビューロは金融庁登録業者です。すでに10億円相当が中国系仮想通貨交換所で換金されたとみられます。
1月に580億円もの仮想通貨を流出させたコインチェックは金融庁への登録を待つ間、特例で営業が認められた「みなし業者」でしたが、今回、金融庁がお墨付きを与えた業者が流出させたことは深刻です。
しかも今回の場合、1000以上もの口座から流出しており、口座からの送金に必要な「秘密鍵」の管理が問われます。顧客資産を含む数十億円もの仮想通貨をインターネットにつながった危険な状態で保管していたことも問題です。
流出が後を絶たない仮想通貨業界に上場企業を含め160以上もの業者が参入を目指しています。業界規模の拡大と利用者の増加は、同時に事故時の被害の拡大をはらみます。
厳格な運用ルールのないまま、数十億円もの仮想通貨が取引されている現状は放置できません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年10月5日付掲載
景気は良くなったというけど、労働者や一般市民には実感がまったくありません。
実質賃金は低迷、ワーキングプアが増大しています。
報告で景気の基調判断を「緩やかに回復している」としました。9カ月連続で同じ表現を用いています。4~6月期のGDP(国内総生産)改定値は、企業の設備投資などがけん引し、年率換算で3・0%増と速報値から上方修正されています。
【ポイント】
①大企業の経常利益は伸びても労働者賃金は横ばい。個人消費は低迷がつづく
②日米会談で貿易協定めざす交渉開始で合意。自動車のために農産物差し出す
③大手交換業者から70億円もの仮想通貨が流出。厳格なルールづくりが急務
消費支出は減少
政府は「回復」という言葉を使用しているものの、国民生活は大変です。個人消費が伸びていません。GDP改定値0・7%増と据え置きです。2人以上の世帯における実質消費支出は、安倍晋三政権発足時の2012年12月から18年7月の間に年換算で22万円も減少しています。年間を通して働いても年収200万円以下の労働者は12年連続で1000万人を超えました。
国民生活の困窮がすすむのは、大企業がもうけを上げる一方で、賃金が上がらないからです。安倍政権の発足後、17年度まで大企業の経常利益は1・6倍に増える一方、労働者の賃金は1・03倍と横ばいでした。その結果、配当金は1・62倍に急増し、内部留保は425兆8000億円と史上最高を更新しました。安倍政権は「世界で一番企業が活躍しやすい国」を掲げています。その実態は、国民生活を犠牲にした大企業の利益拡大にほかなりません。
店頭で品定めをする買い物客=東京都内
国内経済の出来事(7月~9月)
7月2日 | 6月の日銀短観で景況感が2期連続の悪化 |
7月23日 | 国民生活基礎調査で平均所得以下の世帯が61.5%に。 |
7月31日 | 日銀が金融政策決定会合で長期金利の上昇を容認 |
8月8日 | 農水省、17年度の食料自給率を過去2番目に低い38%と発表 |
8月29日 | 8月の消費動向調査で基調判断を「弱い動き」に下方修正 |
9月3日 | 17年度法人企業統計で大企業の内部留保が425.8兆円に |
9月10日 | 4~6月期GDP改定値、年率換算で実質3.0%増に情報修正 |
9月20日 | 仮想通貨交換業大手のテックビュー口が約70億円の仮想通貨流出を発表 |
9月26日 | 日米首脳会談で貿易協定に向けた交渉開始で一致 |
9月27日 | ガソリンが18週連続で150円超 |
農産物を犠牲に
安倍首相はトランプ米大統領との会談で、日米2か国間の貿易協定に向け、交渉を開始することを合意しました。会談後、発表された共同声明は「日米物品貿易協定(TAG)」、「他の重要分野(サービスを含む)で早期に交渉結果を出し得るもの」について交渉を開始すると明記。その議論の完了後に「他の貿易・投資の事項についても交渉を行う」としました。
安倍首相は、首脳会談において「交渉の継続中にアメリカが検討する自動車などの関税引き上げ措置は発動しないことを確認した」と述べています。
米国は日本に対して、牛肉など農産物市場のより大幅な開放を求めています。日本政府は、農産物の関税引き下げを米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)の水準にとどめたい意向とされます。しかし、TPPそのものが米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の重要5品目を除外するよう求めた国会決議に反して交渉し、史上最悪の農林水産物輸入「自由化」を約束したものです。
結局、日本製自動車・同部品への追加関税を回避するために農産物市場を差し出そうという屈従外交です。
仮想通貨が流出
仮想通貨交換所大手のZaif(ザイフ)から70億円相当の仮想通貨が流出しました。同交換所を運営するテックビューロは金融庁登録業者です。すでに10億円相当が中国系仮想通貨交換所で換金されたとみられます。
1月に580億円もの仮想通貨を流出させたコインチェックは金融庁への登録を待つ間、特例で営業が認められた「みなし業者」でしたが、今回、金融庁がお墨付きを与えた業者が流出させたことは深刻です。
しかも今回の場合、1000以上もの口座から流出しており、口座からの送金に必要な「秘密鍵」の管理が問われます。顧客資産を含む数十億円もの仮想通貨をインターネットにつながった危険な状態で保管していたことも問題です。
流出が後を絶たない仮想通貨業界に上場企業を含め160以上もの業者が参入を目指しています。業界規模の拡大と利用者の増加は、同時に事故時の被害の拡大をはらみます。
厳格な運用ルールのないまま、数十億円もの仮想通貨が取引されている現状は放置できません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年10月5日付掲載
景気は良くなったというけど、労働者や一般市民には実感がまったくありません。
実質賃金は低迷、ワーキングプアが増大しています。