きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

経済アングル 日銀が自ら信用失う

2016-02-05 11:18:50 | 経済・産業・中小企業対策など
経済アングル 日銀が自ら信用失う

日銀が初のマイナス金利を導入することで懸念されるのが新手の詐欺です。「銀行にお金を預けると利子を取られますよ。それよりは…」という手合いです。心配した読者からも電話をいただきました。
今回のマイナス金利は、民間銀行が日銀に預けるお金の増加分に課されるものです。一般の預金に適用されるわけではありません。
もっとも、銀行や証券会社は「預金より高い利回りが期待できます」と、超低金利に乗じて元本割れの可能性がある金融商品を売り込んできました。土壌は培われています。“マイナス金利詐欺”をありえない話と片付けることはできないでしょう。
日銀は、黒田東彦総裁が1月21日には国会で「考えていない」と答弁したマイナス金利を、8日後の金融政策決定会合で9人の委員中4人の反対を押し切って決定。日銀そのものが信用できなくなっています。かつて「公定歩合と衆院解散についてはうそをついてもいい」と言われたことがありましたが、今後は「マイナス金利についても」となるのでしょうか。
そこで思い出すのが3年前、白川方明・前日銀総裁の退任記者会見です。日銀が市場を思い通りに動かすことができるという市場観、政策観に「危うさを感じる」と警告しました。就任間もない安倍晋三首相が日銀に「大胆な金融政策」を迫ったことに抵抗を示し、任期切れ前に職を退いた白川氏でした。
NHKのドラマ「あさが来た」はただいま銀行開業の場面。教えを請うあさに実業家、渋沢栄一が「銀行経営に一番大切なものは信用」と説いていました。銀行の銀行である日銀が自ら信用を失う行動をとり続けるなら、日本経済はさらに危うさを増すことになります。
(山田俊英)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月2日付掲載


「銀行経営に一番大切なものは信用」。
マイナス金利…。
銀行の模範たるべき存在の日銀が、信用を失うような行為を行うのは、いかがなものか…。

異形の金融緩和 マイナス金利② 内需総崩れの状況

2016-02-04 14:08:59 | 経済・産業・中小企業対策など
異形の金融緩和 マイナス金利② 内需総崩れの状況

「異次元の金融緩和」によって金利を引き下げれば、投資や消費が刺激され、経済も活性化する―。黒田東彦総裁のもと日本銀行が描いたシナリオは、ことごとく外れてきました。同政策が、大企業には恩恵をもたらしても、中小企業や働く人々には負担しかもたらさず、内需の冷え込みを悪化させているからです。
日銀がマイナス金利導入を決めたのと同じ1月29日、総務省は2015年12月の家計調査を発表しました。調査は、1世帯(2人以上)当たりの消費支出が物価変動を除いた実質ベースで前年同月比4・4%減少し、4カ月連続のマイナスとなったことを明らかにしました。




雇用増えても
背景には、自民党政権下で規制緩和などによって雇用環境が劣化し、雇用数が増えても労働者の賃金は増えにくい構造があります。総務省の労働力調査によれば、非正規雇用労働者数は13年1月の1823万人から15年12月の2038万人に215万人増えました。同期間に正規雇用労働者数は3336万人から3316万人へ20万人減っています(グラフ)。
不安定な非正規雇用が拡大した結果、労働者の実質賃金は3年間で5%も低下(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。年収400万円のサラリーマンなら年間20万円の減少です。
パート労働者を除く一般労働者でみても実質賃金は大幅減です。
同じく1月29日に発表された経済産業省の鉱工業生産指数の15年12月の速報値(10年目100、季節調整済み)も96・5と前月比で1・4%低下しました。こちらも2カ月連続のマイナスです。
同日いっせいに発表された民間シンクタンク12社の15年10~12月期の国内総生産(GDP)予測の平均は、物価変動を除いた実質で年率換算1・5%減となりました。7~9月期の1・0%増から一転、2四半期ぶりのマイナス成長となる見通しを示したのです。なかでも個人消費は全社がマイナス予想でした。
実質GDPを年率2・2%減と予測したニッセイ基礎研究所は、民間消費や設備投資に加え、好調だった住宅投資や公共事業も大幅マイナスという「内需総崩れの状況」と分析しました。消費税増税から2年近くたっても日本経済は底離れできずにいるとし、「消費停滞の主因は実質雇用者所得の低迷にあると考えられる」と結論づけています。


>
円安による利益減で倒産した靴卸会社=2015年3月、東京都内

円安負担重く
日銀の「異次元の金融緩和」は、為替市場で円安を加速させ、自動車メーカーをはじめ輸出大企業に巨額の利益をもたらしました。一方で、家計や中小企業には輸入食料品や輸入原料の値上げが重くのしかかっています。
帝国データバンクが1月13日に発表した調査によれば、「円安関連倒産」は13年の130件から15年は352件へ急増しています。全国中小企業団体中央会が毎月実施している景況調査の昨年12月分には、「円安、海外の人件費高による経費負担増加が激しい」(大阪府、被服)など、円安に対する業者の悲鳴が紹介されています。
マイナス金利決定によって早くも銀行は預金金利の引き下げを始めています。
破たんずみの異形の金融緩和政策に日銀がさらに突き進めば、そのゆがみは中小企業や働く人々に新たなしわ寄せを与えることになりかねません。貧困と格差をただし、暮らし最優先に政治を切り替えることこそが、日本経済再生の道です。
(おわり)(佐久間亮、杉本恒如が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月3日付掲載


マイナス金利導入で決して景気は良くならない。GDPは増えないのが実態。
マイナス金利で、円安で進む家計や中小企業への圧迫は改善しない。

異形の金融緩和 マイナス金利① 行き詰った日銀政策

2016-02-03 17:23:33 | 経済・産業・中小企業対策など
異形の金融緩和 マイナス金利① 行き詰った日銀政策

「マイナス金利」の導入を日本銀行が初めて決めました。日銀の当座預金の金利の一部をマイナス0・1%に引き下げることで、金融機関がお金を日銀にため込まず、貸し出しや投資に回すよう促す金融緩和策です。金融システムのゆがみを拡大する未踏の領域へ踏み込む背景には、何があるのでしょうか。

「新興国・資源国経済の先行き不透明感から金融市場は不安定な動きになっている」
「デフレマインド(心理)の転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大している」
マイナス金利の導入を決めた理由について、日銀の黒田東彦総裁は1月29日の記者会見でこう説明しました。株価の急落と円高の進展という新年早々の金融市場の大波乱を受け、対応を余儀なくされたのです。



「マイナス金利」導入決定後、記者会貝する日銀の黒田東彦総裁(奥)=1月29日午後、日銀本店

総裁前言翻す
黒田氏は、量的金融緩和と質的金融緩和という従来の二つの政策に、マイナス金利という新たな政策を追加し、「三つの次元」で金融緩和を進めるのだと強調しました。裏を返せば、大企業を支援する従来の「アベノミクス」(安倍内閣の経済政策)が行き詰まり、異形の金融緩和策の採用に追い込まれたことを意味します。
実際に29日の金融政策決定会合では、マイナス金利の導入によって「『量的・質的金融緩和』の限界が意識され、市場との対話が難しくなる」との異論が出ました。9人の政策委員のうち、マイナス金利に賛成したのは総裁と副総裁2人を含む5人だけ。4人が反対に回る薄氷の決定となりました。
黒田氏自身、政策決定会合の直前まで、「マイナス金利を具体的に考えているということはない」(21日、参院決算委員会)と述べ、導入に否定的な考えを表明していました。「マイナス金利にはプラス面とマイナス面といろいろある」とも指摘していたのです。
それなのになぜ、一転して導入を決めたのか。記者会見で繰り返し問われた黒田氏の口から、明確な説明はありませんでした。ただ、「ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)に行く前に、どんな追加緩和のオプション(選択肢)があるか検討するよう事務方に依頼した」と述べ、日銀内で具体的な検討を始めた日にちは示しました。

安定性脅かす
黒田氏がダボス会議に向かったのは、国会でマイナス金利の導入を否定した翌日(22日)でした。この日からマイナス金利導入の発表まで、わずか1週間。急転直下の決定だったことになります。
21日から22日にかけては、日経平均株価が1000円以上も急落し、昨年末に比べた下げ幅が3000円を超えていました。“株高が支え”といわれる安倍内閣は、足元が揺らぐ事態に見舞われていたのです。
菅義偉官房長官は、株価急落という「このタイミングで(日銀の)追加緩和を期待しているか」(21日の会見)と記者に問われ、次のように期待をにじませていました。
「(経済と物価のリスク要因を)日銀もしっかり注視しているんだろうと思っている」
そして甘利明経済再生担当相が辞任を表明した翌日。日銀がマイナス金利を打ち出すと、最大限に持ち上げたのです。「新たに大胆な手法を導入したこと」を「きわめて評価するというのが政府の考え方だ」(29日の会見)。
安倍内閣の期待に沿って前言を翻した日銀の“サプライズ”政策により、29日の日経平均株価の終値は先日比476円85銭高となりました。
しかし市場関係者からは、マイナス金利の危険性を指摘する声が相次いでいます。
「低金利時代だから、金融機関はリスクの高い『ジャンク(くず)債』のような商品にまで手を出している。日銀の決定は、そうした商品を買え、ということになってしまう」
「内需が冷え込んでいて国内に優良な貸出先がない中で、銀行はアジアへの融資に積極的になっている。欧米の銀行がリスクを避けてアジアから引き揚げているときに、アジアへの融資が増えると危ない」
金融システムの安定性を脅かす事態を招く恐れがあります。
(つづく)(2回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月2日付掲載


異形(いぎょう)の仏(ほとけ)とは、十一面観音とか千手観音とか不思議な力を宿す仏ですが…。
金融の世界で異形とは、いわゆる禁じ手。
まさにモラルをなくしてしまいます。