憲法施行70年 先駆性を考える 第2部 基本的人権掲げて⑨ 奨学金問題から
奪われる教育の機会
3月に私立大学を卒業した平田かおりさん(22)=仮名=。大学時代に借りた奨学金570万円を返済しなければなりません。
「誰もが学んだことを生かした就職を望みます。しかし、奨学金の返済を考えて選択せざるを得ません」と収入優先の就職への苦悩を語ります。

「返済いらない奨学金を」と訴えてデモする若者ら=2016年12月4日、さいたま市
家族を巻き込み貧困を生み出す
奨学金問題対策全国会議の事務局長の岩重佳治弁護士は「奨学金のために結婚したくてもできない若者も増えています。普通の生活、人間らしい生活をすることを人権といいます。人権を実現するための奨学金が原因で、人権が実現できないことが一番の問題です」と指摘します。
岩重氏は「奨学金の負担は、家族を巻き込んで貧困を生み出しています」と言います。
私立大学に通う西田真さん(21)=仮名=は1人暮らし。卒業時の奨学金の返済額は300万円になります。親が家賃、授業料など年間150万円を負担。上の妹は東京の私立美大に通い、年間150万円以上の学費がかかり、奨学金を利用。高校生の妹は大学進学を希望しています。西田さんは「親は国の教育ローンも借りています。自分に何かあったとき、返していけるのか」と不安を語ります。
憲法は25条で、健康で文化的な生活を送る権利―生存権を定め、26条は教育を受ける権利を定めています。丹羽徹龍谷大学教授(憲法学)は「日本国憲法は、教育を受ける権利の保障は国家による積極的な条件整備によって確保されると位置づけています。とりわけ経済的な理由によって教育を受ける機会が奪われてはならないという考えに基づいています」と語ります。
戦後、教育の無償化は国際的な流れとなり、国家の義務になってきています。さらに、経済的な不平等から教育を受ける権利を守る奨学金制度は、先進国では返還義務のない給付奨学金が主流です。
ところが、日本の大学の授業料は異常に高額(私立大学平均で年額86万円)です。そのもとで奨学金総額の9割をしめる日本学生支援機構の奨学金の実態は、「学生ローン」です。卒業時に、返済総額が800万円を超える学生もいます。高い学費と奨学金という借金が新たな貧困を生み出します。
教育無償化進め給付型の拡充を
世論と運動に押され、安倍政権は「給付型奨学金」制度を設けましたが、支給学生数はきわめて少なく、成績による返還規定まであり、まったく不十分です。
教育費の無償化をすすめ、給付奨学金を拡充し教育の機会均等を守ることは、日本社会の現在と将来にとって急務です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年4月29日付掲載
大学を卒業した後の奨学金の返済額が300万円とか500万円とかは異常です。
大学を含めた高等教育の学費を無償もしくは低額にするか、返済の不要な奨学金の導入が必要です。
奪われる教育の機会
3月に私立大学を卒業した平田かおりさん(22)=仮名=。大学時代に借りた奨学金570万円を返済しなければなりません。
「誰もが学んだことを生かした就職を望みます。しかし、奨学金の返済を考えて選択せざるを得ません」と収入優先の就職への苦悩を語ります。

「返済いらない奨学金を」と訴えてデモする若者ら=2016年12月4日、さいたま市
家族を巻き込み貧困を生み出す
奨学金問題対策全国会議の事務局長の岩重佳治弁護士は「奨学金のために結婚したくてもできない若者も増えています。普通の生活、人間らしい生活をすることを人権といいます。人権を実現するための奨学金が原因で、人権が実現できないことが一番の問題です」と指摘します。
岩重氏は「奨学金の負担は、家族を巻き込んで貧困を生み出しています」と言います。
私立大学に通う西田真さん(21)=仮名=は1人暮らし。卒業時の奨学金の返済額は300万円になります。親が家賃、授業料など年間150万円を負担。上の妹は東京の私立美大に通い、年間150万円以上の学費がかかり、奨学金を利用。高校生の妹は大学進学を希望しています。西田さんは「親は国の教育ローンも借りています。自分に何かあったとき、返していけるのか」と不安を語ります。
憲法は25条で、健康で文化的な生活を送る権利―生存権を定め、26条は教育を受ける権利を定めています。丹羽徹龍谷大学教授(憲法学)は「日本国憲法は、教育を受ける権利の保障は国家による積極的な条件整備によって確保されると位置づけています。とりわけ経済的な理由によって教育を受ける機会が奪われてはならないという考えに基づいています」と語ります。
戦後、教育の無償化は国際的な流れとなり、国家の義務になってきています。さらに、経済的な不平等から教育を受ける権利を守る奨学金制度は、先進国では返還義務のない給付奨学金が主流です。
ところが、日本の大学の授業料は異常に高額(私立大学平均で年額86万円)です。そのもとで奨学金総額の9割をしめる日本学生支援機構の奨学金の実態は、「学生ローン」です。卒業時に、返済総額が800万円を超える学生もいます。高い学費と奨学金という借金が新たな貧困を生み出します。
教育無償化進め給付型の拡充を
世論と運動に押され、安倍政権は「給付型奨学金」制度を設けましたが、支給学生数はきわめて少なく、成績による返還規定まであり、まったく不十分です。
教育費の無償化をすすめ、給付奨学金を拡充し教育の機会均等を守ることは、日本社会の現在と将来にとって急務です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年4月29日付掲載
大学を卒業した後の奨学金の返済額が300万円とか500万円とかは異常です。
大学を含めた高等教育の学費を無償もしくは低額にするか、返済の不要な奨学金の導入が必要です。