「特定秘密保護法案」に反対しているマスコミ、市民運動などの一番の論点は「知る権利」をめぐってのものである。それはまあ当然なんだけど、僕にはそれと同じくらい恐ろしいことがある。あまり論じられてない気もするので、その問題を書いておきたい。それは「適性評価」の問題である。
「特定秘密」というぐらいだから、公務員なら誰でも接するというもんではないのである。第12条において、次のように規定されている。「行政機関の長は、政令で定めるところにより、次に掲げる者について、その者が特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないことについての評価(以下「適性評価」という。)を実施するものとする。」この評価を受ける対象は、「当該行政機関の職員」だけではない。「当該行政機関との契約に基づき特定秘密を保有し、若しくは特定秘密の提供を受ける適合事業者の従業者」も含まれる。これは軍需産業に勤める人物を指しているんだろう。
じゃあ何を調べるのかというと、特定有害活動(スパイ)やテロリズムとの関係を、本人はもちろんだけど、「評価対象者の家族(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この号において同じ。)、父母、子及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子をいう。以下この号において同じ。)及び同居人(家族を除く。)の氏名、生年月日、国籍(過去に有していた国籍を含む。)及び住所を含む。)」「特定秘密」を扱う省庁の高級官僚だけでなく、配偶者、父母、兄弟姉妹に加え、配偶者の父母なども対象になる。(「同居人」って特に書いてるのは、同性愛のケースを想定してるんだと書いてから気付いた。) こんな規定、信じられますか?
今のが「一」で、以下「二」から「七」まである。それらを列挙すると、
二 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
三 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
四 薬物の濫用及び影響に関する事項
五 精神疾患に関する事項
六 飲酒についての節度に関する事項
七 信用状態その他の経済的な状況に関する事項
これらは、本人のみを調査するとも読めるが、家族の状況をも同様に調査するとも読める。2~7を本人のみとする規定はない。「一」に準ずると見なすと、これらを家族にも調べることになるし、また現実的には本人がクレジット破産しそうかどうかだけでは意味がなく、「妻の信用状態」=つまり妻が夫のカードで買い物しまくり破産寸前であるかどうか、などは調べるに決まっている。そういう状況は、情報を売ることの強力な動機なんだから。しかし、犯罪や信用状況などはまだわかるとして、飲酒とか、特に精神疾患について調べる必要はあるのか。「うつ病」や「統合失調症」になりたくてなる人はいない。本人にどうしようもないし、「特定秘密」に関わるという極度の緊張感がトリガーとなって発病することだってありうる。いつ精神疾患が発病するか判らないが、外務省や防衛省に務めている人の家族は精神疾患にかかってはいけないのか。これらは個人のプライバシーのもっとも大事な物であり、特に精神疾患について調査するなどは差別以外の何物でもない。「特定秘密」に関わるからといって、こんなことを上司が調べることが許されるのか。
この「適性評価」は、「評価対象者に対し告知した上で、その同意を得て実施する」とされている。また「その結果を評価対象者に対し通知する」。一応そう書いてあるんだけど、多分実態は違ってくるだろう。「適性評価」をしたところ「非」と出たら、上司の部下管理能力、あるいは部下の能力把握が、行き届いていないことになる。上司の勤務評定に大きなマイナスになるに違いない。だから、大丈夫そうな人を選び、大丈夫でない人(家族が借金を背負ってるとか)には辞退するように促す。だから、大丈夫な人だけ「適性評価」をするということになるに決まってる。そうして、このことが官僚の世界に大きな影響を与えるようになるだろう。もちろん今だって大変な職場だろうけど、今後はよりいっそう、家族に問題があるから出世できないなとか、これ以上飲むと適性評価に関わるかなとか思って働かざるを得なくなるだろう。
ところで、この「適性評価」なく「特定秘密」に接することができる人がいるのである。「次に掲げる者については、次条第一項又は第十五条第一項の適性評価を受けることを要しない。」
一 行政機関の長
二 国務大臣(前号に掲げる者を除く。)
三 内閣官房副長官
四 内閣総理大臣補佐官
五 副大臣
六 大臣政務官
大臣は「適性評価」がいらないのか。私たちは、飲酒癖のため記者会見でろれつが回らなかった大臣、様々な問題があったのだろうが在任中に自殺した大臣、奇異な言動により辞職した大臣などを何人も思い出すことができる国に住んでいるのである。はっきり言えば、官僚より政治家の方が「適性評価」が必要だとほとんどの国民は思うのではないか。もし「特定秘密」が必要で、「適性評価」も必要なんだったら、国務大臣や副大臣や政務官も受けるべきである。官僚や大会社の社員は刑罰の重さより、「懲戒免職」という重い処分を避けられないことが歯止めとなる。情報の重みを理解できずにうっかりリークしそうなのは政治家の方である。
「特定秘密」というぐらいだから、公務員なら誰でも接するというもんではないのである。第12条において、次のように規定されている。「行政機関の長は、政令で定めるところにより、次に掲げる者について、その者が特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないことについての評価(以下「適性評価」という。)を実施するものとする。」この評価を受ける対象は、「当該行政機関の職員」だけではない。「当該行政機関との契約に基づき特定秘密を保有し、若しくは特定秘密の提供を受ける適合事業者の従業者」も含まれる。これは軍需産業に勤める人物を指しているんだろう。
じゃあ何を調べるのかというと、特定有害活動(スパイ)やテロリズムとの関係を、本人はもちろんだけど、「評価対象者の家族(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この号において同じ。)、父母、子及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子をいう。以下この号において同じ。)及び同居人(家族を除く。)の氏名、生年月日、国籍(過去に有していた国籍を含む。)及び住所を含む。)」「特定秘密」を扱う省庁の高級官僚だけでなく、配偶者、父母、兄弟姉妹に加え、配偶者の父母なども対象になる。(「同居人」って特に書いてるのは、同性愛のケースを想定してるんだと書いてから気付いた。) こんな規定、信じられますか?
今のが「一」で、以下「二」から「七」まである。それらを列挙すると、
二 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
三 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
四 薬物の濫用及び影響に関する事項
五 精神疾患に関する事項
六 飲酒についての節度に関する事項
七 信用状態その他の経済的な状況に関する事項
これらは、本人のみを調査するとも読めるが、家族の状況をも同様に調査するとも読める。2~7を本人のみとする規定はない。「一」に準ずると見なすと、これらを家族にも調べることになるし、また現実的には本人がクレジット破産しそうかどうかだけでは意味がなく、「妻の信用状態」=つまり妻が夫のカードで買い物しまくり破産寸前であるかどうか、などは調べるに決まっている。そういう状況は、情報を売ることの強力な動機なんだから。しかし、犯罪や信用状況などはまだわかるとして、飲酒とか、特に精神疾患について調べる必要はあるのか。「うつ病」や「統合失調症」になりたくてなる人はいない。本人にどうしようもないし、「特定秘密」に関わるという極度の緊張感がトリガーとなって発病することだってありうる。いつ精神疾患が発病するか判らないが、外務省や防衛省に務めている人の家族は精神疾患にかかってはいけないのか。これらは個人のプライバシーのもっとも大事な物であり、特に精神疾患について調査するなどは差別以外の何物でもない。「特定秘密」に関わるからといって、こんなことを上司が調べることが許されるのか。
この「適性評価」は、「評価対象者に対し告知した上で、その同意を得て実施する」とされている。また「その結果を評価対象者に対し通知する」。一応そう書いてあるんだけど、多分実態は違ってくるだろう。「適性評価」をしたところ「非」と出たら、上司の部下管理能力、あるいは部下の能力把握が、行き届いていないことになる。上司の勤務評定に大きなマイナスになるに違いない。だから、大丈夫そうな人を選び、大丈夫でない人(家族が借金を背負ってるとか)には辞退するように促す。だから、大丈夫な人だけ「適性評価」をするということになるに決まってる。そうして、このことが官僚の世界に大きな影響を与えるようになるだろう。もちろん今だって大変な職場だろうけど、今後はよりいっそう、家族に問題があるから出世できないなとか、これ以上飲むと適性評価に関わるかなとか思って働かざるを得なくなるだろう。
ところで、この「適性評価」なく「特定秘密」に接することができる人がいるのである。「次に掲げる者については、次条第一項又は第十五条第一項の適性評価を受けることを要しない。」
一 行政機関の長
二 国務大臣(前号に掲げる者を除く。)
三 内閣官房副長官
四 内閣総理大臣補佐官
五 副大臣
六 大臣政務官
大臣は「適性評価」がいらないのか。私たちは、飲酒癖のため記者会見でろれつが回らなかった大臣、様々な問題があったのだろうが在任中に自殺した大臣、奇異な言動により辞職した大臣などを何人も思い出すことができる国に住んでいるのである。はっきり言えば、官僚より政治家の方が「適性評価」が必要だとほとんどの国民は思うのではないか。もし「特定秘密」が必要で、「適性評価」も必要なんだったら、国務大臣や副大臣や政務官も受けるべきである。官僚や大会社の社員は刑罰の重さより、「懲戒免職」という重い処分を避けられないことが歯止めとなる。情報の重みを理解できずにうっかりリークしそうなのは政治家の方である。